午後13時トムのアパート。
半分ほど水を張った湯船にトムが浸かった。湯船の縁に腕を置いて、極楽極楽といわんばかりにくつろいでいる。
「たまには水風呂っていうのもいいもんだな、静雄」
「さ、さっぱりしますよね」
隣で熱いシャワーを浴びながら、静雄は必要以上にどぎどきしている自分に気づいた。
(お、治まれ自分)
今日2人で水風呂に入ってるのにはわけがあった。トムの家のクーラーがうんともすんとも言わなくなって、じりじり灼けるような部屋に取り残されたのが事の始まりだった。
うだるような暑さに限界を超えたトムは突然、よし水風呂するぞ!と高らかに主張して、目を白黒させる静雄をバスルームに無理やり押し込めたのだ。
今日が休日ということもあって昨夜から静雄はトムの家に泊まり込んでいた。
もちろん恋人同士二人っ切りの部屋で、泊まり込んでやることなんてひとつしかなくて、例外に漏れることなく静雄もベッドの上で美味しくトムに戴かれ済みだった。
そんなことがあったものだから、今も意識せずにはいられなかった。昨日の今日でまだ盛ってんのかよと静雄は自分で呆れたが、やはりお互いに裸で期待してしまうものはしょうがないと、自分に言い聞かせる。
夜に入る風呂と違って、窓から入ってきた明るい太陽の日差しがバスルームを照らした。隙間を開けた窓からは、昼間のざわついた街の音が聞こえてくる。
そうだまだ昼過ぎじゃないかと慌てて静雄は思ったが、一度期待した体は火照る一方で、下半身に熱が集まるのをどうしようもできなかった。
(恥ずかしすぎる…!)
静雄はすごく申し訳がなくてトムの顔をまともに見れなかった。
「静雄、」
びくっ。名前を呼ばれて思わず肩が強張った。恐る恐るトムの方を向くと、そこにはニヤついた彼の顔。
ああ、やっぱり、ばれてる…!「ト、トムさん…俺…」
自分でもびっくりするぐらいの情けない声が出て、それを聞いたトムがぷっと吹き出した。
「ははっ、静雄はやっぱり可愛いな。こっち来いよ」
「は、ひ」
ちょいちょいと指でトムに呼ばれて、静雄はぐるぐる巡る恥ずかしさを押さえながら、彼の向かいあわせに座って入った。アパートの湯船は大の男二人が浸かるにはとても狭くて窮屈だったが、パズルのように空いているスペースを探して体を収める。上目遣いで彼を見やれば、彼は呆れたようにそっちじゃねぇよと拗ねた顔をした。
「バカ、こっち来いっての」
誘われた先はトムの腕の中。早く来いよとトムが呼ぶ。はわわわと思考がショートしそうになるぐらい緊張していたが、どこかで期待していた自分も居るわけで、静雄は大人しくトムの胸に背を預けて座り直した。
「これでいいっすか、」
「はい、よく出来ました」
にこにこと静雄の大好きな顔で笑ったトムは、嬉しそうに静雄の首に腕を回す。近かった体がより密着して、トムのひんやりした体が静雄の背中に当たった。
ぱしゃりと水面が揺れるそれだけの感触にいたたまれなくなる。静雄が視線を下に落とすと、見事に兆しはじめた分身が見えた。感覚でわかってはいたが、いざ自分の目で確認すると何とも情けない気持ちになってくる。
これ、どうしよう…。自身の処理を本気で考え始めた静雄を見て、トムは軽く悪戯をしてやろうと前に回した手を下にずらして、静雄の小さく主張している乳首をきゅっとつまんだ。
「あんっ…!」
突如として訪れた両胸の刺激に、静雄は思わず変な声を出してしまった。急いで振り返ると、そこにはいやらしい顔を浮かべたトムの姿があって、かぁと顔が熱くなった。
「やらしい声だなぁ静雄」
ねっとり舐めるようなトムの視線に絡まれて、静雄は逃げるように顔を逸らした。
恥ずかしい恥ずかしい胸触られただけでこれかよ…!
さっきまでゆるく反応していただけの自身も、今の刺激で完全に後戻り出来ない状況になってしまっている。
「なんだもう、ガチガチじゃねぇか」
「ひゃっ、ト、トムさん…」
冷たい水の中で同じく冷たい手のひらが静雄の自身を包み込んだ。ぬちぬちと軽くしごかれて、腰が無意識に揺れてしまうのを抑えられなかった。
「静雄はほんとやらしいな、腰動いてる」
「や、ぁ、言わな、で、くださ…っ!」
体の外側は冷たいのに内側だけが、何か妙に熱くて変な感じだと静雄は思った。水の中でいじられているために、カリと皮の間に水が入るような感覚におかしくなりそうだ。だけどどうにも気持ちよくて、トムの手によって育てられた自身が限界を訴えたのも近い。
トムは空いている方の手で静雄の乳首を軽く撫でるようにさすったりした。静雄はトムのしてくれる優しい愛撫に弱くて、掠めるように触れられるこれだけでも十分な刺激があった。
ぷくりと形を持った乳首はまるで欲情した女のようだった。快楽に追い詰められて声が段々ととろけていく。
「そろそろいきそうか?」
トムが優しく顔を覗き込むと、静雄は素直に限界を訴えた。空気を取り込もうと開けた口にトムのそれが重なって、しっとりと唇が濡れた。
「っ、あぁ…!あっ、ひぁっ、もう、っいきそ、ですっ…」
「ん。よし、じゃあちょっと待ってな、」
「んっ、…っ?」
トムは胸の飾りを撫でていた手を静雄の後ろに伸ばして、昨日までトムのものを受け入れていたそこに中指を入れた。水のせいで滑りはあまりよくなかったが、静雄のそこは簡単にひらいた。静雄は縋るようにバスタブの縁に手をかけて、上擦った声をあげる。
トムはその間もゆるゆると指を動かしたり、指を増やしたりして中を気持ちよくさせて、びくびくと大袈裟に反応する静雄の体を楽しんだ。
静雄の意識が最高潮に追いやられたところで、熱く芯を持ったトムの分身が静雄の隙間に入り込む。
「あっ、あっ、あ…!」
体の中に入りこんだ熱に静雄は否応なしに翻弄される。彼の大きくてかたいものが粘膜の弱いところを掠めて、どうにかなってしまいそうだった。
トムが奥を突き上げるたびに、つま先から頭の天辺まで甘い痺れが走って、静雄はただ声をあげることしか出来なくなる。瞼が重力に負けてだんだん重くなってきた。限界はもうすぐそこまできていた。
「んやぁ、出る、いくっ、いく、トムさ…っ、…んあ!」
前立腺を彼のものに擦られて、静雄はぶるりとあっけなく果てた。静雄の出したものが水面に白く浮かんで沈むのを、追いつかない頭でぼんやり眺めていた。
波打った水がざぶんと体に当たって、先ほどまでの行為の激しさを物語る。
「いっぱい出たな、」
トムが静雄の体越しに前を覗きこんで、混ざらずに水面を泳ぐ白濁を指に取った。
「あ…!っ、すんませ、おれ、風呂のなかなのに、」
「いいって。気にすんなよ、つーか出させたの俺だしよ」
トムがにんまり笑いながら手に掬ったそれを自らの口元へもっていく。待ってください!と静雄の焦った声が風呂場に響いたが彼は聞かないふりをして、白く濁った静雄の精液を指ごと口に含んだ。
「静雄の味がする」
「…うああ、や、…めてください…!」
静雄は恥ずかしいと背中を小さく丸めて、トムのからかうような視線から逃げた。初だよなぁとトムに言われて、余計に彼の顔が見れなくなる。この反応が原因で遊ばれてるということはわかっていたが、どうにも冷静ではいられなかった。
悶々としたところで、ちゃぷんと湯船が鳴ってトムが後ろから静雄の首筋に顔を近付けてくる。呼吸がかかるぐらいの耳元であとちょっと付き合えよという彼の声が入ってきた途端に、またすぐに水面がゆらりと揺れ出して、静雄はせつなくトムを締めつけた。
「キツ…っ」
「んっ、く、っ…あ、あ、っ!あぁっ、はぁ、あっ、ん…!」
は、は、と浅い息を吐きながら、トムの形に沿うようひらかれたそこを意識した。内壁がまるで別の生き物のように収縮して、自分ではもうどうにもできなった。トムからたまに漏れる感じた声が更に静雄を煽って、達したばかりのとこはまたゆるゆると硬度を持ちはじめる。既に数回も精を吐き出していた為にひりひりと先端が痛んだが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「…はぅ、ぅ、きもち…い…っ!…うあっ、ト、ムさん、あっ!あ、あっ、…ぁっ」
「ん、お前締めすぎ…っ、俺もっ…やべ…いきそ、」
「んぁっ!トム…さん…っ!ふぁ…、あ、あ、っ、くださ、あ…」
締め付けるたびにトムの硬さと熱さを感じてしまい、どんどん興奮が高まっていった。だんだんと早く乱暴になるピストンにトムの限界を知る。
飛びそうになる頭を僅かな理性で繋ぎとめながら、静雄は彼に呼吸をあわせた。
「悪い、静雄、なか…出すぞ、」
「んっ、んっ、トムさん…っ」
トムの切羽詰まった吐息が首筋にかかって、びくんと体が揺れた。まるで全身全てが性感帯になったような感覚だった。
「やべ…っ、も、出る」
「…は、あっ!、や、熱いの、っ…!くだ、さ、っ…っ!」
「っ…!」
呻き声と共にトムの体がしなって、どくりと体内に勢いよく熱が注がれる。溢れそうなトムの欲を享受しながら、溶けた体が満たされるのを感じた。遅れて静雄も薄くなった精液を揺れる湯船に吐きだした。
こぷりとトムが静雄の中から自身を抜くと、中に出した白濁が水の中に舞うのが見えた。
すっかりぬるくなってしまった湯船には二人分の白濁がゆらりと揺れていて、やってしまったという後悔と、腰の倦怠感がじわじわと襲ってくる。真っ昼間から何を盛ってるんだと少しの反省。
「たまには水風呂もいいもんだな。静雄のかわいい姿が見れた」
満足そうに口に出すトムを見て、余計に顔が赤くなる。水の中なのに体の中がのぼせそうになった。
「…ト、トムさんのえっち」
「なんだ、知らなかったのか、」
トムに後ろからぎゅっと抱きすくめられて濡れた唇をあわせたら、もう余計な言葉は出てこなかった。
とりあえず落ち着いたら2人で風呂掃除な、とトムは笑った。
揺蕩う花
お風呂えっちは後ろから!
と、意気込んで書いた気がします。
(0905)