セックスは好きだ。気持ちいいのは心地良いし、熱を解放して、いらないこと何も考えずに済むから。
セックスは好きだ。相手は誰でもいい。だってそうでしょ、抱いて抱かれての関係に愛なんていらない。
ずるっと音を立てて、すっかり萎えたアルフレッドくんのペニスが抜かれた。中に出されたので後ろがぬるりと滑る。絶頂を迎えた荒々しい息のまま、アルフレッドくんは僕に口付ける。
舌が入ってきても僕は応えずに、されるがまま咥内を暴かれた。それに焦れたアルフレッドくんが不機嫌そうに眉を寄せる。
「…君はもう少しムードを作るとかないのかい?」
もっと気持ち良い顔をするとかさ。眼鏡の奥のサファイアが僕に訴えた。僕はふふっと笑う。
「僕達にムードなんて必要なの、」
その台詞を聞いて更に機嫌を悪くしたのか、唇に噛みついてきた。ぴりっとした痛みと共に、鉄の味がする。
だってそうでしょ。ムードなんていうものは愛を交換する恋人同士がするものだ。快楽を追うだけの情事には必要ない。愛のない相手に無償で愛情を売るなんて、そんなの勿体無いじゃない。
「…所詮体だけの関係か」
「あれ?君はとっくに気付いてると思ってたけど」
今頃気付いたの。声に出して笑うと頬を思いきり殴られた。突然だったので歯がガチっと揺れて歯茎を切ってしまった。口に広がったのは、先程と比べものにならないほどの鉄の生臭ささ。
「ふふっ、やっぱりアルフレッドくんはこうでなくちゃ、ね」
激情の赤。目の前のアルフレッドくんは苦虫を噛み潰した顔をして目線を逸らした。僕はその頬に手を寄せて優しく囁く。
「さっきの話だけど、アルフレッドくんを愛してあげてもいいよ。その代わり、君の大事にしているものが欲しいんだ」
例えば、アーサーくんとかね。そう言ってやるとアルフレッドくんはまた、ためらいなく僕の頬に手を上げた。
ねぇ、馬鹿じゃないの。君が捨てたんでしょ。アーサーくんを見限ってボロボロにして、君から捨てたんでしょ。
「違う!!!!」
がっと胸倉を捕まれてすぐ、左頬にも衝撃が走る。さっきと逆の頬を殴られて、顔全体がじんじんする。
「何が違うの、君から独立を言い出したんじゃないか」
それでも尚にこやかに笑いかけると、アルフレッドくんは僕の上に馬乗りになって勃ち上がったペニスを押し込んだ。怒った時にも勃つんだね。
目の前の背中に爪を立てて、君は馬鹿だから、わかるように言ってあげる。
大事だったら捨てちゃだめだよ。がんじがらめに縛って、監禁して、ちゃんと守ってなきゃだめだよ。そうしないとすぐに逃げちゃうよ。
僕とアルフレッドくんは似てるから。だから、忠告してあげるんだ。
「ねぇアルフレッドくん、一緒にロシアになろうよ」
大事なものって気付いた時には手元にないんだよ。どうしてかな。
だからね、今度新しく大事なものを見つけたら、それこそ僕から離れられないように縛っておかなきゃと思うんだ。
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