ロンドン特有の纏わりつくような曇り空。それに通じる何かが確かに彼にはあった。陰湿で粘着質。彼の機嫌が悪い時は決まって海峡を挟んだこちらにも被害があった。主にベッドルームで。

ろくに慣らしもせずに乱暴にペニスを突き立てられて、フランシスはヒュッと息をのんだ。

「機嫌が悪くなると俺に乗る癖なんとかしろよ…お兄さん体保たないんだけど…」

律動の合間に常々思っていたことを彼に訴えると、お前案外余裕あるんだな、気に食わねぇ。と全く答えになっていない台詞が返ってくる。俺の体調は無視ですか、大英帝国様。

すぐさま腰を引かれ、ぐっと最奥に導かれる。ふいの動きにたまらず声をあげた。彼の一番太いところがフランシスの気持ち良いところに当たって、思わず声が跳ねる。それに気を良くした彼ががしがし腰を動かすので、まだ慣れない後ろがずきりと痛んだ。

だからフランシスはアーサー相手のネコは苦手だった。相手のペースを考えて、気遣って、相手を気持ち良くさせるのがセックスじゃないのか。自分なりのセックスのモラルとマナーが存在するフランシスにとっては、自分本位なアーサーとのセックスには毎度毎度泣かされている。

自分本位の男って最低よねー。と、何かの雑誌に載っていたレディの言葉を突然思い出して、何でこいつモテるんだろうとぼんやり思った。

「なぁおまえ、女の子にもこんな無理矢理してんの…?」

かなり前から聞きたかったことをそれとなく聞いてみる。するとアーサーは動きを一旦止めて、心底悪そうな笑みを浮かべた。

「あ?んなわけねぇよ、ちゃんと慣らしからにするに決まってんだろ。」

女だったら前戯でアソコをドロドロのグチャグチャにしてから突っ込む方が気持ち良いからな。

「………じゃあ…俺は?」

「お前相手に面倒くさい前戯なんてできるかよ、気持ち悪ぃ。」

…わぁ…最低…。

理不尽な彼の言動に文句のひとつでも言ってやろうと思ったが、それを口に出すとますます扱いが酷くなりそうなので、言葉を発するかわりにぎゅっと奥歯に力を込めて快感をやりすごした。ちくしょう何で俺がこんなテクニックも思いやりも何もない男とヤらなきゃいけないんだよ…。
………まぁ…確かに、がっつかれるの、ちょっとだけ、好きなんだけど。

ついでに、好き。と思った瞬間に、彼のをきゅっと締め付けてしまって…おいおい一体どこの乙女なんだ俺は。と恥ずかしくなる。

「…っいきなり締めんなフラン…!」

アーサーがいきなり切羽詰まった声を出したので、フランシスははっと我にかえった。それと同時に中に入った彼のが質量を増したのに気づいて、あれ?と思う。もしかして、
もう一回。今度は意図的に彼のを締め付けると、彼はまた息を荒くして小さく呻いた。え、なにこれ楽しい。

「てめぇ……っ」

このアーサーの反応に、フランシスは大いに満足した。普段のセックスでは彼から与えられる快感に不本意ながらも溺れてしまい、到底主導権を奪うことは出来なかったので、自分がアーサーより優位な立場にいることはとても珍しいことだった。

「…何笑ってんだよ」

「ごめんごめん、アーサーがあまりにも可愛かったから思わず、ね」

ぱちっと小さくウインクして、舌を差し出す。それに誘われたのかアーサーが唇を近付けてきて、お互いの口元が唾液でベタベタになるくらいの長い時間キスを交わす。あーやっぱこいつキスだけは上手いんだよなぁ。

たまらずキスの余韻に浸っていると、不満そうな顔したアーサーに耳元で囁かれる。

「………やっぱり余裕のあるお前ってムカつく」

その減らず口閉じさせてやるよ。

声色は優しいのに口調はどこか海賊時代を彷彿とさせて不覚にもドキッとしてしまった。坊ちゃんえろいよ…

視界の端でニヤッとアーサーが笑ったと思うと、およそ紳士ではない荒々しい動きで、フランシスの体をシーツに深く押し付けた。ぐっと奥まで入ってきた質量にフランシスが顔を歪ませると、お前のそういう顔すげぇ好き。と、かつての大英帝国様は呟いた。







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