アーサーは目の前の愚か者を心の中で蔑んでいた。変態。汚い。気持ち悪い。そして考える。彼はいつから、どうして、こうなってしまったのだろうと。

冷たい床に広がるカーブのかかった金髪がさらりと揺れる。痣だらけの肢体と血で茶色くなったシャツ。フランシスはそれをおざなり程度に身につけて、床に転がったまま、アーサーを見つめていた。その瞳は歓喜に溢れているように見える。

その熱っぽい視線にアーサーは顔をしかめた。そしてふと視線を彼の下半身に遣ると、ジーンズの上からでもわかるほどフランシスのペニスは勃起していた。

…なんで、

今さっきまで、アーサーの踵の固いブーツで踏まれていたフランシスのペニスは熱くたぎっていた。興奮しているのか、荒い息が聞こえる。アーサーはまるで汚いものを見るような目でフランシスを見た。

ああ、その目たまんねぇ。と、フランシスは恍惚とした表情で呟いた。気持ち悪い。

ねぇ、もっと、きもちよくしてよアーサー。フランシスは更なる刺激を望んでアーサーの靴を舐める。まるでスレイブのようだった。
フランシスはいつもアーサーにミストレスであることを強要するので、あながち間違ってはいないのだけれど。

そこに居るのはいつものフランシスではなかった。待てのできる利口な犬でもない。発情期の行儀のなっていないただの猫だ。国としての尊厳は皆無だった。

べろりと今もなお舐められている靴の上から、アーサーは彼の舌の感触を探した。しかし厚い皮の上からでは何も感じない。心が急激に冷えていく。そんなこちらの思いを知ってか知らずか、フランシスは快楽を求めて言葉を急かす。
早く早く。

アーサーは胸たっぷりの嫌悪感を飲み込んで、フランシスのペニスを靴底で踏み潰した。そのごりっとした感触が生々しくてアーサーは舌を鳴らす。
やばい気持ち良いよアーサー。これだけでイけそう。

なんで。

俺は、もっと、普通に愛し合いたいんだ。

フランシスは恍惚とした表情を浮かべる。このような形ではないと愛を受け取れないフランシスは腐っているのだ。まともではない。しかしそれでもアーサーはフランシスを愛すことをやめなかった。

神様に試されているんだ。きっと。

そんなことをぼんやり考えながら、アーサーはフランシスを愛す為に爪先に体重を掛けた。








戻る

- ナノ -