その日アーサーはばったりフランシスに会った。これから帰るの?いい材料買ったからうちで飯食べる?と誘われて、アーサーは二つ返事で返した。仕事が一段落して、さあ帰るぞというときだったので、特に用事はなかったし、何より彼の料理は美味しい。フランシスはパンやワインの紙袋を抱えて、タイミングいいなぁお前と言った。
そうしてフランシスは、さりげなく歩く位置をずらして車道側についた。女扱いするな!と思ったが、彼は恋人を大事にする愛の国を自負しているので、日常的に当たり前の行為なのかもしれない。
隣からふわりと優しい香りがした。
この日の彼は嫌みにならない程度のお洒落な香水を纏わせていたので、すれ違った何人かの女の子が羨望の眼差しで彼を見つめていた。やはり彼は自然とモテる。そんなフランシスの恋人は俺一人なんだと考えてたら、なんだか嬉しくなってしまった。隣を歩くフランシスにはご機嫌だねぇ言われたが、別にそんなんじゃねえよ!といつもの天の邪鬼っぷりを発揮した。しかし彼は終始によによしていたので、きっとアーサーの気持ちなど手に取るようにわかるのだ。
日が落ち掛けている大通りを並んで歩く。裏路地に入ってすぐの道端で、フランシスの手がアーサーの太ももとか内股とかをするする撫でる。やめろと言う前に体が気持ち良くなってしまったので、アーサーはもっといやらしいことがされたくなってしまった。
熱で潤んだ瞳でフランシスを見上げると、家まで待てる?と余裕のある笑みで言われた。その笑顔があまりに余裕たっぷりでかっこよかったので、悔しくなって革靴で足を思い切り踏んでやった。彼は痛がって、何するのー!と言ったが知らんこっちゃない。お前から仕掛けたくせに、余裕しゃくしゃくの態度が気に食わないのだ。
しかし、もう待てない、と言って彼のスボンに手を掛けたのはアーサーからだった。普段なら紳士であることを公言している彼にとってはらしからぬ行為だったけれど、今更そんなことを言ってられない。まだ外にいるのにも関わらず、アーサーは積極的に行為を進めていく。
フランシスの足の間に膝立ちになり、下着の中からまだ柔らかい彼のを取り出して舌先に乗せた。ぴく、とフランシスが反応する。両手で根元を持って、丁寧に唾液を絡めて愛撫してやると、坊ちゃんえろいね。と頭をくしゃりと撫でられた。その声が思うより存分に艶を含んでいたのに、アーサーは歓喜した。
すっかり膨らんで、持て余したフランシスのペニスから苦い味がしてくる。味わって舐めてやると上から、もう入れたいよアーサー、と先ほどとは違う余裕のない声で言われて、アーサーは柄にもなくきゅんときてしまった。
でも、まだ慣らしてないからだめだ。と優しく残酷に告げると、彼は言葉を聞かずに強引にアーサーのズボンを下着ごと降ろした。冬の冷たい風に曝されて体がぶるりと震える。フランシスはまるで獣のような目をしながらアーサーの腰を手繰り寄せた。壁に手をつけさせて、ごめんね、と耳元で囁いて、アーサーの裏庭に十分に育ったペニスを侵入させた。
その瞬間に大袈裟な程に甘ったるい声を上げてしまい、アーサーは恥ずかしさで死にたくなる。ぐいぐいと内壁を押してくる熱に、込み上げた射精感を飲み込んで、気持ち良くしてくれんだろ?と、吐き気がするほど媚びた声で言った。
そうしたら中に埋もれているフランシスのものが更に大きくなって、彼は舌舐めずりして、ああ天国連れてってやるよ、とひどく下品に口にした。
人通りも少ない薄暗い路地で二人は行為に没頭した。ズボンには白濁が飛び散って、清廉だったシャツは皺だらけになっていたが、気にする余裕もなかった。熱い息を吐き出して、しばし余韻に浸る。
ユーロスターに乗って、フランシスの家に着いた頃には既に夜は深まっていた。夜風に乗った木の葉のさざめきだけが音になって、アーサーの耳に届いた。
がっついちゃってごめんな。お前の体最高だよ。
フランシスに言いながらキスを仕掛けられた。器用に唇を舌先でなぞられたアーサーが、あ。やばい、また勃つと思った瞬間には、ドアに体を押し付けられていいた。
下半身に血液が集まって熱くなる。ぐちゅぐちゅとやらしい音を立ててキスが激しさを増していく。
ぐいっと太ももに押し付けられた固い感触に背筋がぞわりとして、また目の前が官能に染まる。フランシスも興奮しているんだと思った時には、さっきしたばっかりなのに。と、なけなしの理性の訴えも、とろとろに溶けて綺麗になくなってしまうのだった。
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