*ヤってるだけ
「ふっ…う…っ…」
「シズちゃん、サイコーの眺めだよ」
珍しくしっかり丹念に慣らされたそこに、正常位で臨也のペニスがあてがわれる。少し張ったカリの部分が引っかかったものの、抵抗も少なく進入するそれに、静雄はぐっと奥歯を噛みしめる。
膝裏に手をかけられて足が押し開かれるという、とてつもなく恥ずかしい体勢なのはこの際目をつぶったとしても、この胃が圧迫されるような感覚だけは頂けない。肺がうまく酸素を取り込んでくれなくなって、とても苦しくて辛い。臨也にヤり殺されると思うのはこういう時だ。
もちろん相手はそれをわかっていてわざとこの体勢を選ぶ。一見すれば好き合っている恋人同士の基本的な体位かもしれないが、膝が耳の横にくるぐらい体を折り畳まれれば、体がかたい静雄にはかなりキツい体勢だった。
しかもこの体勢のせいであまり奥まで入らないし、後ろだけが無理に広がった気がして内心裂けてしまうのではという不安に駆られてしまう。
以上の理由で、静雄はあまり正常位は好みではなかった。
痛みに耐えようと掴んだシーツは既にビリビリに裂けている。力の抜き方がうまくわからなかった。
「んっ…は…っ、む…っ!んぅ…くるし…っ」
「あはっ、やっぱりこの体勢すごく締まるねぇ、シズちゃんの苦しそうな顔も見れて一石二鳥だし!」
覆い被さりながらリズミカルに腰を突き入れる臨也。至極楽しげな様子に苛立ちが沸く。
こちらは曲がった背中の痛みと内臓の圧迫にひたすら耐えているというのに、ひとりだけ楽しやがって。
知っての通り静雄はあまり気の長い方ではなかったので、なんかもう色々限界でややあって、静雄は腕力に身を任せて臨也の肩をガッと押し返した。
「うおっ!痛っ!ちょっ、なに!?」
いきなりの肩への衝撃に目を白黒させる臨也。気がつけば挿入はそのまま静雄が臨也の上に馬乗りになっていた。正常位から騎乗位への見事なシフトチェンジに、臨也はあっけにとられた表情を見せる。
体勢を変えてやっと呼吸が楽になったと静雄は息をついた。
「もうっ、何で体勢変えちゃうかなぁ。シズちゃんの苦しそうな顔見るの好きだったのに…」
「ンっ…ざけんな!こっちは、辛い…んだ、よ…っ」
「えっ?シズちゃん苦しいの好きでしょ?すごくぐちゃぐちゃだった癖にさぁ……………って、たんま!たんま!待って!殴らないで!顔はやめて!」
すんでのところで静雄の剛拳を避けた臨也は、変にへこんだベッドのスプリングに肝を冷やした。こんな至近距離で殴られたらたまったものではないと、静雄を大人しくさせるために目の前にあるペニスをぐっと掴む。
「あっ…!」
敏感なところを握られて静雄はたまらず声を出した。その反応に気をよくした臨也は入ったままの自身で静雄の中をガツガツ突いた。
「あっ、て、てめ、何勝手にっ、い、動い…て…ん、っや!」
「いやぁ、俺だって命は惜しいし、さ」
徐々に快楽に耐えきれなくなった静雄が前のめりに体を倒して、臨也の顔のすぐ横に頭を寄せた。
犬ように短く息を吐きながら、静雄は目をつむってうめき声を漏らす。
臨也はそんな静雄を横目で笑いながら、楽しげに体を揺らした。
静雄が覆い被さったことにより、二人の腹の間で静雄のペニスが擦れる。体の内側と外側を同時に攻められて、わけのわからなくなった静雄の耳の中に臨也はぬるっと舌を潜らせる。
「ひあっ!」
「お、いい声。シズちゃんって体の外は頑丈だけど、中は本当に敏感だなぁ。今のでまたキツくなった」
「…やっ…いっ、いざや、いぁっ、あっ、みみ、は、だめ…!っ、やめろ、っや、だ、っ臨也…!」
「俺がこんな美味しい状況、逃すわけないでしょっ」
「ひゃあぁっ!…やっ!あっ、」
ぐり、と舌を器用に動かして静雄の耳の穴をなぶる。静雄はその度にびくんびくんと大袈裟なほどに反応して、逃げようと必死に体を曲げた。
もちろん臨也がそれを許すわけがなく、空いている両手で静雄の頭を抱き込んで抵抗を制した。
普段の静雄であればこんな拘束などすぐに解いてしまうだろうが、弱いところを三点同時に攻められているこの状況下ではどうしようもできない。特に耳は近くで話されただけでも背筋がぞくぞくして、体の力が抜けてしまうというのに。何ができるというのか。
ぴちゃぴちゃと鼓膜のすぐそばまで迫っている水音に意識が持っていかれながら、静雄は己の唇を噛みしめる。せめてこの恥ずかしい声だけでもどうにかしたかった。
「…ん…っ、むぅ、ん…う…っ」
「ちょっと、なに声我慢しようとしてるの?もっと聞かせてよ、俺しか聞いてないんだしいいじゃん」
声を我慢したことにより、不機嫌になった臨也が不満気に話す。
「だから、お、お前に…聞かせ、たく、ねぇんだ…よっ…」
はふはふと荒い息を隠して静雄が言う。静雄は自分から出る感じきった娼婦のような声が大嫌いだった。
釈であるが、臨也に抱かれるのはそれなりに気持ちがいいし、上手いし、セックス自体は嫌いではない。が、喘ぎ声だけはどうしても捨てきれない羞恥が勝ってしまい、出したくなかった。
もちろんそれを面白く思わない臨也は無理やりに声を出させようとする。
「…いつも言ってるけどさ、声出した方が楽だよ?」
「う、るせ…っ」
「強情だなぁ。まぁ、そこを屈服させるのが楽しいんだけどね」
ニヤと臨也が黒い笑みをつくりながら、汗の浮かんだ首筋を下からべろりと舐めあげる。
「ぅや…っ!」
急に別のところを舐められて、思わず静雄から裏返った声が出てしまう。臨也は汗の味を味わうかのように舌舐めずりをして入れっぱなしの下半身を強く突き上げた。
「んあぁっ!」
「うん!やっぱりシズちゃんはこうでなくっちゃね!」
「くそっ…っあ、あっ、ひ、っ、激し、く、すん、なあ…!」
「あー締まる、もしかして、そろそろシズちゃんいきそう?」
臨也の問いかけに静雄は頭をこくこく動かして答えた。先ほどから一回も達してないために限界を感じたら早い。
「あ、あっ、も…っ、無理っ、いきそ、あっ、いくっ」
「うん、俺もシズちゃんの中、出すね?」
「んっ!いく、う…、いく、いく…っ」
「はは、いく時は、声、押さえられないんだね」
「っン、いく、いくぅ、ああぁあっ!」
「…っ」
びくっと一際大きく静雄の体がしなって、勢いよく吐き出された白濁が二人の腹を濡らした。それに続くように臨也が欲望を静雄の最奥にまき散らす。
静雄はどくんどくんと注がれる精液に恍惚とした表情を浮かべた。あまり認めたくないが、悔しいことに体の相性だけはすごくいいのだ。
達したばかりで力の抜けた2人の体が重力にそってベッドに沈む。
「…シズちゃん、重い、よ」
「うっせ…ぇ」
文句を言いながらも、臨也は静雄をどかそうとはしないで、小さくため息を吐くだけ。
退けといわれても脱力しきったこの体はいうことをきかなかった。
「まさに腰砕けってやつ?」
アウトモラル
尻切れトンボすみません…
タイトル負けしました。
(0827)