*ノンケトム






初めに言っておくがトムには男色趣味は一切ない。男同士でセックスなんてもってのほか、キスだって手を繋ぐのだって、トムの好みはいつだって温かくて柔らかい女の子だけだ。

だから行きつけのレンタルビデオ屋でいやらしい女の子があはんうふんと淫らに鳴くDVDを白昼堂々見たいと思うのはきっと普通で健全な男である証拠だと思う。
性欲を持て余した成人男性ならきっと誰でも経験したことがあるだろう。というかない方がおかしい。

自分ので見飽きた野郎の体より、柔らかでボンキュッボンのすべすべな女の子の肌に癒されたい願望はきっと誰にでもあるはずだ。
もちろん目的は見ることだけではなく、もっとその先にあるのだが。

とにかくも、トムは男より女の子が好きな普通の男ということを念頭に置いて話を聞いてもらいたい。

トムはいつものようにレンタルビデオ屋の青い袋を開けて、DVDをプレーヤーにセットし、リモコンを用意し、傍らにティッシュを置いた。後で慌てるのが嫌なのでしっかりティッシュの残数を確認しておく。やっぱり事前準備は欠かせない。

準備万端といったところでベッドに横になり、再生ボタンを押した。

『ぶっかけ☆真夏のペロペロキャンディ
〜夏休み補習編〜』

すぐに画面いっぱいにでかでかと丸いフォントの文字が踊り、トムは気分を高揚させる。
AVにありそうな安っぽいタイトルだが、タイトルを見ただけで何をされるのか一発でわかるようなものは制服フェチのトムにとってとてもありがたかった。
あまり公言することはないがトムは学生モノが大好きであった。

もちろんここに映るのは実際年齢18歳以上のお姉さんしか居ないがそれでも、学校、教室、制服のアイテムがこちらの気分を盛り上げてくれるだろう。わくわくしながら続きを待つと、学校らしき廊下にスーツの男が歩いていく画面が移し出される。背中を向けていて顔は見えないが、どこかに向かっているようだ。設定からして先生と生徒のいけないお遊びとかそういうものだろうか。

男はひとつの教室の前で立ち止まり、中の扉を開けた。狭い教室の中央にある2つの机には問題集が開かれて置いてあった。椅子の上には補習をしているであろうブレザーの女の子の足元が映し出されている。
紺のハイソと白い脚のコントラストが眩しい。ふくらはぎが少し筋肉質に見えるがまぁ許容範囲内だ。

ごめんね、待ったかい?

画面の男が女の子に話しかける。女の子は何も言わないで男の手を自分の胸元へ誘った。
ここではっきりと顔以外の彼女の体が映し出されたが腕や腿なんかがやけに筋張っていて、言ってしまえば女の子というゆより、がたいのいい男そのものだった。

正直自分の求めている柔らかさと丸みからは程遠いフォルムだったが、せっかく借りたんだし、と続きを見ることにした。

触って欲しいのかい?えっちな子だ

男は胸元に持っていかれた手で制服の上から彼女の乳首を摘み上げた。見るからにただの貧乳で、どちらかというと巨乳が好みのトムにはがっかり以外の何者でもない。
そもそも今思えばこのDVDのタイトルは見覚えがないものだ。確かトムが借りたのは『真夏の巨乳ハーレム天国☆』とかだった気がする。これは巨乳でもないしハーレムでもない。

あのレンタルビデオ屋、次行ったら文句のひとつでも言ってやる。トムはそう心に決めてとりあえず間違えたものはしょうがないと、続きを見ることにした。割と切り替えは早い方だ。

画面を見ると男が手に棒つきバニラアイスを持って、自分のと一緒に舐めさせようとしている所だった。棒アイスとか一体どこに仕込んでいたのだろうか。

夏の熱い気温で、袋から出した時には既にアイスは溶け出していた。

ポタポタ溶けるアイスで彼女の乳首をつつく。冷たいのか気持ちいいのか彼女はぴくんぴくんと反応する。掠れた声が耳に届き、これはさぞかしいい顔をしているのだろうと思ったが、そういえば先ほどからこの女優は顔を写していない。
そういう演出なんだろうか。AVはもっと即物的な方が売れるし需要があると思うのだが。

一体どんな顔をしているんだろうか。もったいつけやがって。やっぱり女優が可愛くなけりゃいくもんもいけないだろ普通。女の子は制服ごしはもどかしいのか胸の上までブレザーを捲りあげる。だがカメラは胸元から離れてむき出しのへそを映し出したため、肝心の胸はまだ写っていない。どんだけ焦らすつもりなんだこのAV。

トムが苛つきはじめた瞬間、画面いっぱいに男のとアイスを一緒にくわえた女の子の顔が写った。やっとか、とトムは女の子の顔みまじまじと見つめる。

心臓が、止まったような気がした。

そこに写っていたのは貧乳でちょっと筋肉質な女の子ではなく、広い胸板と上腕二頭筋が発達した間違えようのない男の体と顔だった。
しかもその顔には嫌というほど見覚えがある。中学の後輩であり、現在は仕事のパートナーでもある池袋最強の男。

「しずお…?」

トムは目を疑った。

バニラアイスを口の端から垂らして、大きく育った男根をいっぱいに頬張って、女子高生のコスプレまでしているこの女の子…いや、この男は、どこからどう見ても間違いなく静雄だ。

トムが見間違えるはずなどなかった。

静雄の口淫が良かったのか画面の男は呆気なく果てて、静雄の顔面全体に精液をぶっかける。正気を疑う。そんなことをあの静雄にやるなんて何て命知らずの野郎なんだ…!
あまりの衝撃にトムが別方向に心配したが、静雄は何事もなかったように顔にかけられた精液を舌で舐めた。ぺろりぺろり。仕草は慣れた女優そのもので、普段とのギャップにトムは開いた口が塞がらない。
知り合いが出演しているAVなど見たいと思ったことはないが、これは案外キツイ。

ふふ、いいこだねぇ。そろそろこっちが寂しいんじゃないのかな?

男は卑下た笑いを浮かべながら静雄の太ももをするすると撫でた。短いスカートの裾から簡単に手を侵入させる。あ、と小さな声で静雄が喘ぐ。

ずくん

トムの自身が反応した。下半身の違和感にトムが焦る。

画面の静雄は女物のショーツの上から自身を撫でられて、白い股を震えさせている。パンパンに育った自身の先が狭い隙間からはみ出ていて、とてもエロい。

エロい…?トムは軽く芯を持った自身に戸惑い、絶望した。男同士には興味もないし、むしろ気持ち悪いとまで思っていた自分の感性が体に裏切られたのだ。
嘘だろ…っ!?

あ、あっ、焦らさな…ぃ…でっ

静雄は更に喘ぐ。トムが聞いたことのないような上擦った色を含んだ声だった。静雄は積極的に先走りでベトベトになったショーツを自ら脱いでいく。薄い下生えの中に紛れもない男の象徴が見えた。

先生、早く…っ

静雄は男に背を向けて机に両手をつく。むき出しになった尻を画面に突き出して男を誘った。モザイクがかかっているものの、こちらからは尻の穴がひくひくと動くのがよくわかった。

トムは男の、しかも大事な後輩のこんな姿を見て萎えるどころか急速に硬くなり質量を増す自身に、恐怖にも似た感情を覚える。

だって俺は可愛いくて柔らかい女の子が好きで、好みで、だからこんな、ごつくて、男同士とか、アナルセックスとか、静雄とか、なくて…

慣らしもせずに突き立てられた男根に静雄は涎を垂らしながら鳴いた。あんあんと女のようによがる姿を見てトムは息を荒くさせた。何、だこれ…!

下着の中でキツくなった自身にトムは震えながら左手を添えた。目を画面から逸らさずにくちくちと上下に動かす。

あっ、そこ、気持ちい、い、せんせぇ…!

机に爪を立てて、精液と涙で顔をぐちゃぐちゃにした静雄が淫らに男と、トムを煽った。

ふぁ…っン、イく、イく、

何度も揺さぶられて静雄は呆気なく果てた。スカートや床に精液が飛び散る。男はイく寸前に静雄から自身を取り出して何度か扱いてから静雄の背中に続くように射精した。

力が抜けたのか膝からがくんと崩れ落ちる静雄。虚ろな目でこちらを見る。

全て見透かされてるような深い瞳にトムは熱い息を吐き出して自らの右手を見つめた。

手のひらにはぬるついた白濁。静雄の恥辱に興奮した証だった。ティッシュを使う暇もなく衝動的に駆け抜けた証。

トムは近くにある携帯を取ってある番号に電話掛けた。トゥルルルと無機質な電子音が数回鳴って、もしもし?と耳に慣れ親しんだ声が届いた。トムは無意識に笑った。

「おう、いきなり悪いな、いきなりなんだけど、今から家に来れるか?………美味しいバニラアイス、あるんだよ」











ようこそ新世界!







いつか書いてみたかったAV女優静雄


(0820)

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