*静トム
ぬるいえろ
熱くなった体をソファに押し倒された。
誰も居ないとはいえまだここは会社だ。確かに人が居ないからってキスを仕掛けたのは俺だったが、ここで押し倒されるのは全く予想外だった。
…いや、それは嘘だ。ここで事に及んだことがないかと言われれば否定は出来ないから、こうなることは予測の範囲内で。なのに仕掛けたのは俺からで。
(…それってちょっと期待してたってことか…?)
覆い被さるように俺の上にのしかかった静雄が余裕のないキスを俺に絡ませる。お世辞にも丁寧といえない口付けに、息があらぶり息継ぎが上手くいかなくて、涙目になる。
(あーもう考えらんねえよ!バカ!)
はふはふと情けない声が喉奥から上がって、気づいたらスーツのボタンが全て解かれていた。
「おい、そんな焦んなって…っ」
キスから逃れた俺は目の前の獣を見上げる。普段はサングラスの奥に隠された鋭い瞳が今はそのまま晒されていて、色越しではない素の視線どきりと胸が鳴る。完璧にスイッチの入った静雄は、自分でも暴走を止められないのか、一言すみませんとかすれた声で呟いて行為を続行した。
「あっ、ボタンは引きちぎるなよ!」
かたいシャツのボタンに苛ついた静雄が、左右にシャツを破こうとしていたので瞬間に慌てて制止させた。シャツ代だって馬鹿にならない。
「…俺が自分でやるからさ」
このままだとスラックスまで駄目にしそうだと直感的に感じ取った俺は、慣れた手つきでボタンを外していく。腰を浮かせてベルトを抜き取り、恥じらいもほどほどにトランクスごと一気に脱いだ。静雄の喉がごくりと鳴るのがわかった。
「ト、トムさん男らしいっす」
「…はぁ、ったく、お前はもっと加減ってものを覚えてくれよ…」
たじろぐ静雄を尻目に、まぁ加減なんて機能が静雄に備わっていたら、こいつが標識を人に向かってぶん投げるということはなかったよなと、半ば諦めながら思った。我慢とか自分で気持ちを制御出来ていたら喧嘩をすることも絡まれることもなく日々平穏に過ごしていたに違いない。そうなれば池袋最強の名は多分こいつにはなかっただろう。
とりあえず、たらればの仮定は隅に寄せて、落ち込んだ犬のようにたれ下がった尻尾をしている静雄(俺にはそう見える)に体を差し出した。
「もう、続きしていいですか、」
もう待てないとうように俺の体に触れようとする静雄。先ほどのように犬で例えるとあれだ、まるでエサを目の前にしておあずけをくらっていた飼い犬のよう。
ああ…そうすると……エサって俺か…。
「ああ、こいよ…………っん!」
『待て』を解禁するや否や、外気にさらけ出さた胸板を静雄の長い指が這った。両胸に小さく主張する乳首を優しくなぞって、指の腹で押しつぶす。
男の平らな胸を触って何が楽しいのかと以前静雄に聞いたことがあったが、…トムさんの感じてる顔が好きなんです。と、少々の照れを含んだ声で返された。冷静な方の頭で、いやそんなお前の方が可愛いよと思ったが、冷静じゃない方の頭は静雄の発した可愛いという言葉に年甲斐もなくときめいていた。全く情けない。
「は、う、っ…あっ、あ、っ」
「トムさんエロい…」
乳首を歯で噛まれて、ピリとした痛みと共に快感が体を走る。痛いのに気持ちいだなんて、自分もしっかり調教されてしまっているようだ。
「あ、あ、や、いたい、あっ、」
「気持ちくないですか…?ここしっかり立ってますけど」
静雄の熱い息や、すらっと通った鼻が肌にあたる。それだけの刺激でもうたまらないのに、たまに乳頭をちゅっ吸われて自然に腰が浮いてしまう。静雄の太ももに高まった熱を押し付けるように動かすと、静雄が興奮しながら、俺の雄を掴んだ。
「もうガチガチじゃないすか…」
「は、お前のせいだろ…、いいから早く…っ」
「…っ!余裕のないトムさんすっげーえろい…」
「あっ、」
煽られた静雄は掴んだペニスを上下に扱いた。くちゅくちゅ音がするのは多分先走りが溢れているからで、下半身から漏れる恥ずかしい音に聴覚までも犯されていった。静雄の手に追い詰められたペニスは、限界まで膨れて腹につきそうになっている。静雄は扱く手はそのまま、俺の片足を左肩に担いで大きく脚を開かせた。
そして片方の空いた手で、後穴に中指を挿し入れる。
「あっ、あ、ふ、…きもちわり…っ」
排泄器官に直接指をいれられ、不快感に顔を歪める。何回か出し入れされたおかげで増えた腸液のぬるつきで動きはだいぶスムーズになったが、俺はこの行為だけは何度やっても慣れなかった。確かに後で入れられるモノの大きさを考えたら、こうやって慣らしておかないと後々辛いのは自分なのだとわかってはいる。
だがこの、浅い所でじわじわ動かされるのがもどかしくて嫌いなのだ。早く奥まで欲しくてたまらなくなる。
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