黒炎12IF―裏っぽいもの―



 元就はオレがいないと深く眠れないと文句を言う。オレは空気ほどに気配を隠しているつもりだが元就には分るらしく、オレの薄い気配が感じられないと安心できないのだとか。忍びとして嘆くべきかそれとも恋人として喜ぶべきなのか。どこの大名も同じだろうが、大名と言うのは激務だ。今は戦国乱世、下剋上など各地で頻繁に起きている――元就の座を狙う者も多く、戦場でなくとも気を抜けない。だから唯一気を抜いていられるオレと一緒にいたがるのは分るんだが。


「元就様、これではすぐに動けないのですが」


 オレを後ろから抱き締めて休みをとる元就に言えば、黙っていろとばかりに腕に力が込められる。


「黙って貴様は我に抱かれておれば良い」


 首に頭を擦りつけながら言われるとほだされるというかなんというか。細くて柔らかい元就の髪が首筋にあたってこそばゆい。小太郎君は我慢の子――! とか馬鹿なことを考えながら笑わないよう耐えていると、体に力が入ったのを勘違いした元就がギュウギュウに絞めつけてきた。拷問よりはマシだがなかなかキツい。


「我に抱かれるのは嫌か」

「いえ、嫌ではないですが?」


 だからこそ逃げ出していない。嫌だったらすぐに天井裏へ逃げている。それよりも言葉を少し変えてくれると有難いのだが……それでは衆道の交わりのこと言っているようで気恥ずかしいものがある。せめて「抱きしめる」と言って欲しい。


「なら何故――」


 元就の手がオレの顎を掴み仰け反らせる。ちょっと痛い。


「身を強張らせているのだ」


 その声は愉快だと言わんばかりで、分っているくせに聞いてきているだろうことは間違いなかった。元就の胸に倒れこんだオレと口を重ねる。触れるだけの接吻だったが元就はニヤリとあくどい笑みを浮かべている。――まだ何かするつもりなんだろう。


「分っているでしょうに」

「さてな」


 体にぴったりとした忍装束の上から手を這わせ、元就がオレの腰やら内腿に微妙なタッチで触れる。ああもう、疲れてるから休憩すると言ったのはどの口だ? 疲れることをしてどうする。


「疲れているのではなかったですか」

「知らぬな……こちらに集中しろ、小太郎」


 耳の裏をねぶりながら言う元就に内心一つため息を吐いて諦めることにした。好きな相手に求められて厭だと思うわけがない。だた少し――TPOを考えてくれと言いたいが。


「任務中なのですがね――元就」


 半身をよじって向かい合い唇を合わせる。頭を抱え込んで口づけをだんだんと深くしていきながら、最近元就が公私混同していることを嘆いた。この頃ずっと腰が痛いんだがどうしてくれる。














+++++++++

 僕がどうやっても12禁も行けないのは、雰囲気だけで満足しているからですフハハ。合体なんて書けないよ。でもとりあえず表に置いておくのはあれなのでこっちに置いていますが。他の方なら普通に表に置いているだろうレベルですよねー……
10/20.2010

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