黒炎を孕む風IF―受け攻め逆版―



 好きなのだと言われ、驚いた。元就は冷徹――とまでは言わないが愛だ恋だに現を抜かすような男ではないと思い込んでいたから。


「元就様、それは――」

「肯定の返事しか聞かぬ。答えははいか是のみだ」


 すがるように見つめてくる元就に切ないような気持ちになった。胸が締め付けられる。不安と期待に揺れた元就の瞳は壮絶に艶やかで、飴のように舐めてしまいたいと考えて――気が付いた。


「どうなのだ、答えよ小太郎」


 抵抗らしい抵抗をしないオレをゆっくりを押し倒し上から上目づかいで見つめてくる元就に、理性という名の堤が決壊した。


「好きだ」

「こ、たろう」

「好きだ」


 腹筋だけで半身を起し、さっきまでとは位置関係が逆転する。オレが押し倒し元就が下敷きになる。だが元就はオレに跨っていたため、今は元就の脚を割ってオレがいる。


「ずっと好きだった」


 気付いていないふりをしていた。どれだけ元就が忍に理解を示そうと、やはり忍の身分は農民よりも低いのだ――身分を弁えないにも程があるというもの。

 今は忍とはいえ、元はといえばオレはただの一学生。ホモなんて気色悪いと思っていたただの平凡な学生の一人だった。そのはずのオレが何故こんなにも元就に惹かれているのか。分らん。周りに女がいないからかもしれないし元就が忍という『職業』を認めてくれたからかもしれない。憧れを恋愛と勘違いしたのかもしれない。


「元就様は、オレが好きか?」

「好きだとも、先ほども我から言うたであろうが。――それと、様など付けずとも良い。ただ我の名を呼んでくれ」

「元就」

「小太郎」

「元就、好きだ」

「我も小太郎を好いている」


 背中を丸めて唇を合わせた。合わせるだけだなんて、なんというか純情すぎるだろオレ。どこの生娘だよオレ。逆に恥ずかしいわ!


「ふふ、小太郎顔が赤いぞ」

「――なら、責任を取ってくれますね?」


 勘違いでも良い、オレは元就を愛してる。










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 最後の一文をひねりだすのに時間がかかりました……。こっちも良いな!
09/21.2010

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