こころに剣をさす



 久しぶり過ぎてヒソカを受け入れるにはきついそこを何日もかけて広げて、やっと繋がったのが昨日の話。普段使わない筋肉を使ったせいか尻や腹回りだけじゃなく背中も痛いし、ベッドから起き上がる気も起きなくて四肢を投げ出したまま天井を見上げる。

 ヒソカとこういう行為をするのは一体何カ月ぶりだったか。前にしたのは一ヶ月前やそこらじゃない、半年から一年くらい前のことだったかな。隣に熱はない――ヒソカはとうに起きて活動してるようだ。ヒソカの気配がキッチンのあるあたりでゴソゴソしてる。朝食の用意をしてくれてんのかな? 昨晩はがっつかれたたし俺の好物を作ってくれてると信じてる。


「ひーそーかーちゃぁーん。お水と濡れタオル持ってきてぇー」


 口が臭い気がするし、顔も濡れタオルで拭いたい。大声を張り上げれば部屋の外から「分ったよー☆」という返事がして足音が洗面所の方へ行った。


「おはよう、ヨリ☆」

「おはよ、ヒソカちゃん」


 足でドアを開けて現れたのは髪を下ろしたヒソカで、短パンを履いてる以外に何も身に着けてなかった。俺が擬態してる中年男もまあまあ筋肉ついてるけど……ヒソカの体はもっと凄い。俺をプリンセスホールドしてても車と同じスピード出せて、そのうえ平気な顔してるんだぜ?

 ヒソカの手には絞った濡れタオルとペットボトル、風呂場に置いてるバケツ。うがいをした後の水をここに吐き出せと、初めて体を繋げた時から毎回こうして差し出される。先ずうがいをしてそれを吐きだして、ヒソカがそれを捨てに行ってる間に顔を拭う。

 愛されていると思う。俺もヒソカを愛してるし。ヒソカが十歳の時に偶然拾ってしばらく面倒を見て、別れたりまた一緒に暮らしたり――互いに好き勝手してきた。






 それが変わったのが五年前で、数ヶ月ぶりに会ったヒソカと二人で宅呑みしてたら押し倒された。


「ねえヨリ☆ ボクに突っ込まれるのが良い? それとも突っ込むのが良い? 選ばせてアゲル☆」


 雄の顔をしたヒソカは壮絶に色っぽくて、こんなヒソカが相手なら食うより食われる方が気持ち良いに決まってる。俺はアルコールでふわふわした思考のまま「突っ込まれたい」と答えた。息が熱いのはアルコールのせいなのか、ヒソカの色気に中てられたのか。全身を包んでいた熱が下腹に集まってカッカと沸騰した。


「ヒソカになら食われたい……」


 ヒソカは俺のそれよりも長い舌でぺろりと唇を舐め、襟ぐりがよれてきてた俺の部屋着を引き裂いた。


「嬉しいよ、ヨリ! どっちがネコをするか喧嘩せずに済んで。ボクはヨリに突っ込みたかったんだ☆」


 固いフローリングに寝転がったままヒソカを見上げる。ヒソカの頬は紅潮して視線は蕩ける様で、俺を好きだと全身から発していた。双眸に映る男はどう見ても冴えない日系で美形とは程遠い――それでも、見慣れた自分の姿がヒソカに見つめられてると思うとこれ以上なく興奮した。

 ヒソカに膝を割られ、開脚したそこにヒソカの腰が当てられた。浮かされた腰が少し苦しいけど死にそうなわけじゃないし。

 反応し始めていた股間にヒソカの股間が触れ、ヒソカの興奮度合いが分った。


「ああ、ヨリ……ずっとこの日を夢見てたんだ」

「ずっと?」

「ああ、ずっと。ボクがキミより強くなるまで我慢に我慢を重ねて――」


 疑似セックスのように揺らされる腰に熱が高まって喉を晒した俺にヒソカは体を縮めるようにして覆いかぶさり、俺の喉を舐め始めた。顎の線を辿って耳元で何度もリップノイズを響かせた――慣れてるみたいだな。


「もしキミが嫌がって抵抗しても押さえ込めるようになるまで」


 耳朶に軽く歯を立てられてビクリと震えた俺の姿に笑いながら、ヒソカは襤褸と化したシャツの残る俺の胸や脇をソフトタッチで撫で始めた。


「愛してるんだ……」


 降って来た口づけは深いそれで、グチャグチャに口の中を掻き回されて飲み込めない唾液が口の端から垂れるのが分った。口づけはどんどん下降して、胸に触れる柔らかい髪がくすぐったいのとヒソカが舐めるので気持ち良い。この世界に転生してからそう言えば恋人を作ったことがなかったせいでか、十数年ぶりのペッティングがとてつもなく感じた。


「う、あ……」

「突っ込まれないとイケなくなるまで、ここを開発しちゃいたい」


 ズボン越しに尻に中指をグリグリされながら乳首を噛んで引っ張られる。海老反りになった俺にヒソカは呼気だけで笑った。それさえも気持ち良い要素でしかなくて、俺はヒソカの頭を両腕で抱え込んだ。


「ヒソカちゃ、俺もとも、と、ネコだぁら……」

「っ、へえ☆」


 ズボン越しの指がより強く尻に差し込まれた。


「ネコって分ってるんだ☆ ってことは、もう処女じゃないんだね☆」


 俺の腕の中からこっちを見上げるヒソカの目はギラギラと輝いていた。前世はそう言った嗜好の知り合いとの付き合いが両手両足じゃ数えきれないほどあったけど、今生では一度もない。だがそれを言ったところで、このヒソカが信じてくれるとは全く思えなかった。


「ちが、まだ」

「――慣らさなくても平気だよね?」


 否定の言葉を信じてもらえず無理やりブツを押し込まれたそこは当然裂けて、尻から流れる血と衝撃で嘔吐した俺の姿を見たヒソカは真っ青になった。……慣らし始めは指二本突っ込んだだけでも尻の穴は切れるんだ。それ以上に太い物が突っ込まれて切れないわけがない。


「ヨリ、ヨリ! 信じなくてごめん。痛かっただろ? こんなに血を流して、吐いて」






 この初体験の失敗から、ヒソカが俺を抱く時の前戯はねちっこくと言うか長くなって世話しいになった。久しぶりに体を繋げることになれば慣らすのに数日かけるし、事後生ける屍と化す俺の世話を甲斐甲斐しく焼くし。


「なあヒソカちゃん、今日のご飯なーに?」

「当然、ヨリの大好きなカリカリのベーコンに半熟の目玉焼き、焦げ目の付いたソーセージ、サラダ、バターを塗って焼いたトーストさ☆」

「おう、最高」


 普段は面倒くさいからトーストにバター塗って食べるだけなんだよな。両腕をヒソカに向かって差し出せば抱き上げられる体。腰がここまで痛いと歩く気になれん。


「ご飯を食べたらまたシようね☆」

「腰が痛いんだがなぁ」

「そう言わないでくれよ☆」


 顔中にキスを落とすヒソカがちょっと邪魔だとは思うが、こうして大事にされるのは幸せだ。

 すぐ横にあるヒソカの鼻をかぷりと噛む。甘さを増したヒソカの目を見つめながら鼻の頭、口の端、唇の順に口づけた。


「……ん」


 見つめあったままキスを深くしていく。温かいうちに朝食を食べられるかな……冷えたら冷えたで温めなおせば良いか。


「好きだよヨリ、愛してる☆」

「俺もだよヒソカちゃん」








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 エロが書きたいと思って結果がこれだよ! エロっていうより痛いよ!!
2013/10/10

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