MAMMA MIA!2



 目覚めれば体が妙に軽くて、それがなんだか凄く楽しくてニコニコしてしまう。


「らんらんるー♪ らんらんるー♪」


 飛び跳ねれば一メートルかそこら飛び上がった。凄い、これは夢かな! 視線が低いのも体が軽いのも全部夢だからに違いないっ!

 いつまでも何故か浮き立ったような気分が消えなくてずっと飛び跳ねて遊び回っていると、頭上から低い笑い声が聞こえてきた。


「ククク……可愛い奴じゃな」


 立ち止まって見上げれば、お月様が二つならんでいた。


「まだお昼だから出番じゃないよ、お月様」

「残念じゃがワシは月ではない。じゃが、真昼の月というのも風情があらんか」

「なるほど」


 木に腰掛け、白と黒の髪を風もないのになびかせた美青年は目尻に入れ墨じみた紋も色っぽく、晒しを巻いた胸元を片腕を袖から抜くことで誇っている。腰には刀をはいた彼は――ぬらりひょん?


「あなただれ?」

「うむ、ワシはぬらりひょん。お主と同じ妖怪よ」

「……同じ」


 同じ? 首を傾げて見上げれば、ぬらりひょんは軽々と木から降り私の前に立った。私はぬらりひょんの腰までの背しかない。私の両脇に手を差し込み持ち上げたぬらりひょんはまた木を上った。


「まだ自分の名も知らんか。お主はぬらりひょん、ワシと同じくぬらりくらりと生きる妖じゃ」


 ニっと笑むぬらりひょんは優しく私の頭を撫でた。


「しかし、ぬらりひょんであるのはワシだけと思っていたからのお……お主もぬらりひょんと名乗ってはどちらがどちらか分からぬな」


 ワシが名前でも付けてやろうか、とぬらりひょんは目を細める。


「ワシと唯一同じ妖よ、お主はワシと共に来るか?」

「んー?」


 妄想が具現化したみたいな夢だし、どうせならついていきたい。首を横に倒して傾げようとしたら頭の重みで倒れた。――まあ、ぬらりひょんがちゃんと捕まえててくれたから木の上から落ちることはなかったけど。


「生まれたばかりじゃからか、こう抜けておるのは……。お主、一人で生きてはいけぬのう」


 どれワシが連れていってやろう、とぬらりひょんは私を抱き上げた。私が腕に座っても余裕しゃくしゃくのぬらりひょんはきっととても力持ちだ。妖怪だから当然だけど
ね。


「妹分の名じゃ、良く考えて付けねばなるまい」


 ちと面倒じゃのう、と言ったぬらりひょんの頭をポカリと殴ったら猫がじゃれておる様だとからかわれた。


「ぬらりひょん」

「なんじゃ?」

「呼んだだけ」


 夢が醒めるまで、もう少しこの楽しい夢を過ごさせて。








 そして、あの漫画が手からスポーン事件から一週間が過ぎた。それから毎晩のようにぬらりひょんの夢を見て、私は夢を見るのがその日一番の楽しみになってしまった。うーむ、授業中に禁断症状とか出始めたらどうしよう。


「今日も見たの? ぬら孫の夢」

「もち。今日は一緒に団子無銭飲食した」

「平和な夢見てんねぇ、大阪城はどうしたのさ」

「それがまだみたいでさぁ……てか時代背景が戦国時代まっただ中なんだよね」

「原作掠りもしねぇ!!」

「いえてる!」


 友達二人とゲラゲラ腹を抱えて笑った。


「でも夢見てるせいか頭の疲れ取れないんだよね。だからちょっと寝るわ。HR前に起こしてちょ」

「アイアイ了解。授業中寝んなよ」


 だから今から寝るんだってばと内心文句を言いながら机に顔を伏せる。長いため息を吐いて目を閉じた……それが私の終わりで始まり。














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 同日連続更新というか書き溜め分。
2011/10/04

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