MAMMA MIA!



 読書とは出会いだと思っている。待ち合わせの約束もない相手を捜して、そして出会う。――ううん、出会うんじゃない、再会するような興奮があるのだ。まるでそれは、かつての親友と十年ぶりに二十年ぶりに会うような胸の高鳴りなのだ。


「また誤魔化しに詩的なこと言って。で、勉強は?」

「後でする、大丈夫」

「どこが大丈夫か。毎回宿題忘れてるって先生から聞いたんだからね」

「あのクソ教師、シめてやる」

「こらっ!」


 あのクソは教師としての職務をほぼ放り出しているくせに、そういうことだけは目聡いのだ。舌打ちと一緒にそう罵れば拳骨が落ちた。痛い。


「先生をそんな風に言うもんじゃないでしょ」

「お母さんは授業参観とか三者面談の時しか見てないからそんなこと言えるんだよ。あの担任全然仕事とかしてないし、態度最悪だし目つき厭らしいし」

「他のお母さんからそんな話聞いたことないわよ?」

「だってアイツ、私の胸ばっかり見てくるんだもん。仕事してないのは学校のみーんな知ってるよ、他のクラスの子にも『アイツが教師とか運悪いね』って言われたし」


 私の胸は、自慢じゃないがでかい。学年一っていうか学内一でかい。ちょっと足が太いくらいで特に太ってるわけじゃないから胸ばっか目立って、だから私への悪口はたいがい『ウシ乳』とか『早く垂れちまえ』とかばっか。胸のサイズを気にしてる子からは超嫌われてるし。でも顔が良いわけじゃなくて普通、良くもなければ悪くもない十人並み。だから私の友達は顔も胸も気にしないタイプばっかで、そうなるとみんなオタクとか本好きばっかりになる。だからか私の読む本の幅は広い。分厚いのだとニーチェの言葉みたいな本から薄いのだと少年漫画まで、色々読んでる。


「そうなの?」


 お母さんは信じられないといった顔で私を見る。なんて言うかさ、親の世代って教師に対して夢もってない? 教師だからそんなことするわけない、みたいな思いこみがあると思う。親の思う教師像と実際の教師像って凄く差があるんだよね。

 勉強しない理由を教師の話で誤魔化した私は、首を傾げながら部屋を出ていくお母さんに内心ガッツポーズをした。宿題しない理由なんてあの担任が嫌いだからってだけだけど、宿題ってもの自体が面倒なのもあったり。だって公文通ってるから授業についていけないなんてのは今のところ経験したことないし。


「ぬら孫読もっ!」


 ベッドにダイブして漫画を広げる。寝転がりながら読むならがぜん漫画、座って読むならハードカバー。これ鉄則ね。


「昼若も可愛いけど夜若も色気があって可愛いんだよね。でも一番は総大将! 強いし、時代もあってか言葉遣いも色っぽいし。珱姫よりも雪麗と結ばれろってのは邪道らしいけど、雪麗とチョメチョメしちゃえよと思うのは誰にも止められないよねー」


 親が三十代後半になってから生まれたからか、私の持ちネタはかなり古い。ほらさ、だいたいこういうネタって親から受け継がない? よっこらしょういちとか。


「はー……でも、総大将が現実にいたら良いのにな。総大将みたいにぬらりくらりと生きてみたいよ、うん」


 私がそういった瞬間、漫画が手から飛び出した。


「ちょっ!?」


 まるでバネでもついてるみたいに飛んだ漫画に目を剥いて、視線だけでそれを追いかける。漫画はそのまま落下して私の頭に被さった。視界が覆われるのと同時に、私の意識は掻き消えた。














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 下ネタとかエロとか、書ける範囲内のレベルで頻繁に出てくる、予定です。
2011/10/04

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