いろはにほへと



 叔父上と魚魚合わせをしていて、何でだろう、いつの間にかオレは叔父上の膝の上に座っていた。背中に触れる叔父上の体温が凄く怖い。いやもうホント、怖いったらない。冷や汗通り越して脂汗かいてるから、オレ。

 この時代女性とのまぐわい――あ、エッチのことね――は男の力を弱くすると考えられてて、性欲処理が『オレの右手☆』だけじゃ寂しすぎるからか……対象は男になっちゃった。嘘じゃないよ、ホントだよ。武田信玄だって男色だったんだから! あのトイレで長考してた、痔持ちじゃなかったのかと心配になるあの武田信玄だって部下(もちろん男)とイヤンでアハンなことしてたんだから!

 ――でもさ、現代人の常識を持ってるオレからするとね、男同士はどうしても嫌だ。彼女がいたことがないから右手がテクニシャンになっちゃって、そのうち魔法使いになるんじゃないかと思ってたオレだけど、流石に男をそういう対象にしてまで童貞を捨てようとは思わない。それにこの体はまだ八歳児。精通? なにそれ美味しいの――ウオェ、嫌な想像した。吐きそう。――と、思考がずれた。今はこの叔父上を止めるのが先だ。


「お、叔父上……?」


 オレは叔父上の右腕を必死に押さえながら訊ねる。帯が解かれていることは――まあ気にしない。着物の合わせがはだけていることも――まあ目を瞑ろう。だけど叔父上の右手がオレの胸を揉んでいることは頂けない。イヤンもう本当に止めて、そっちの道は怖いぞ。


「幸松丸様――」


 叔父上がオレの耳の裏に舌を這わせた。気色悪いぃぃぃ! 背中をナメクジの大行進。もう本当に勘弁して! バックヴァージンとか死ぬまでとっておきたいから。止めて耳噛まないで!!


「お、叔父上ぇっ」


 叔父上が怖すぎて何も言えない罠。餓えた狼ってこんな感じなんだろうね、ギラギラした目付きが心の底から怖いですよ。オレの大事な息子も縮みましたよ怖すぎて。知ってた? 緊張で息子も縮むんだぜ!


「そのような呼び名ではなく、元就と――」



 ハァ、と温い息をはきかけられて背中がゾクゾクした。嫌な意味で。


「もと、なり……」


 従わなかったら問答無用で犯されると思った。いや、今も犯される寸前なんだけど。涙目で叔父上の名前を口にしたら、ぐるんとひっくり返されて叔父上と正面から向き合うことになった。なにこれ怖い。

 そしてオレは、叔父上に食われた。いや、むさぼるように口吸いをされた。吸い殺されそうで本当に怖い。大人のでかい舌がオレのちっさい口の中を蹂躙する。合わさった唇の隙間からダラダラとオレの唾液がこぼれる。だんだん頭がぼんやりしてきた……口蓋を舐め上げられてぞわりとしたものが背中を走る。ん、と鼻を鳴らしてしまいその上ずった声にまたぞわぞわする。この感覚はあれだ、うん。言いたくない。

 自然な動作で押し倒され、口を繋いだまま伸しかかられた。ホント怖い、止めて。そう言いたいけど全部持って行かれた。はだけた着物を更にくつろげ、叔父上の手が脇腹に胸に触れる。優しいけど、優しいけどね、手つきは! でもこの行為自体がオレの本意じゃないんだけど、そこのとこどういうつもりなのさ!?


「怖がられずともこの元就に全てお任せを」


 いや、逆に怖い。


「天へ誘って差し上げる故」

「おじう、え」


 嫌だから涙目なのを分ってください。ただ怖いだけじゃないんです、嫌なんです。男は範囲外というより論外なの、突っ込まれるよりは突っ込む方なの。分ります?

 叔父上の舌が唾液の筋を辿って胸に下りた。オレは必死に叔父上の肩を押すんだけどここは大人と子供、どうしようもない力関係に全オレが泣いた。


「ひっ」


 空いた手がお尻に回り、揉みながらだんだんと後ろのあれに迫る。ゆ、指が入ったよおおおおお! 指先だけだけど!


「ひ、っ!」


 あげようとした悲鳴は満面の笑みの前に砕かれた。


「あう……」


 指がめり込んできてるんだけど逆らったら切痔にされそう。


「ふむ、入らぬな……」


 入らないなら入れようとしないでください叔父上。


「幸松丸様」

「え……ふぁひ」


 返事をしようとしたオレの口に、さっきまでオレのお尻をいじり回してた叔父上の指が突っ込まれた。ぐにぐにと口の中を刺激するそれはなんていうのかな、気色悪い。叔父上には悪いけど。


「お舐めください」

「ひゃ、ひゃい」


 断れない雰囲気だぜヤッタネ! 泣いて良いですか、天国にいるだろう母上、父上。今貴方の息子は叔父に食われようとしています。誰か助けてー。もう希望もクソもないけど、誰かー、たーすーけーてー。

 必死に指にしゃぶり付き、ペロペロキャンディー相手みたいに舐めてたら叔父上が顔を真っ赤にした。いや、舐めさせたのは貴方です。煽った責任を取って頂くなんて言われても。指が離れ、考えるのもおぞましい下のアレに指が這わされた。自分の唾液だとは分ってるけど妙に冷えた液体が気色悪い。背中が弓反りに浮き上がったのを好機にまた胸に吸いつかれ、男のそこは性感帯じゃありませんと内心叫んでたらお尻に指が侵入してきた。ぐにぐにと上下を探り、だんだんと奥まで入り込んでくる。イヤアアアアアアオレのヴァージン! オレのヴァージンを返して!!


「へあっ」


 と、ぐっと指があるところに触れた時目の底でフラッシュが光った。縮んでた息子が弛緩して元のサイズに戻る。


「ここか……」


 叔父上は物騒な言葉を呟いた。そして繰り返されるそこへの刺激にオレの体が跳ねるわ跳ねる。考えがまとめられない――前世と会わせたら魔法使いなオレには刺激が強すぎた。

 情けない声を上げて体を震わすオレを見下ろして叔父上が何を考えたかなんて知らない。ただ言えることは、最後まで頂かれました、ということです。オレのバックヴァージンンンンンン!!










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僕にできる限界。
12/10.2010

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