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 引き取られてから一年が過ぎた。語学力もつき流暢に話せるようになったは良いんだけど、やっぱり私は「息子」というには年齢がいって見えるから、骸とは父子じゃなくて兄弟に見えるらしい。そりゃあ二十五、六の男に十の息子ってのは早すぎるもんね。

 私がクローン体だということは誰にも知られちゃいけない。つまりボンゴレ幹部しかこの事実を知らない。――その私は、今日、初陣に出る。


「××、君は僕の息子です」


 だから自信を持って、恐れずに。と骸が言った。――忘れてるのかもしれないけど、私は研究所で侵入者たちをめった刺しにしてたんだけど。今さら戦闘で緊張しろと言われてもできないというか。一生懸命「緊張がとれなければ掌に人と書いてそれを飲めば良いんですよ!」と言ってる骸につい微笑む。なんていうか、微笑ましい新米パパだ。骸が昔の自分と私を完璧に分けて考えられるようになったのはここ数カ月のことだし。


「うん、パパン」


 頷いて私は鎌を具現化する。もういっそ厨二を極めてやれということで漆黒のローブも一緒に具現化。名前は夜笠。元ネタの小説はこの世界にないからバレない。

 全身が真っ黒で、まさに死神らしい恰好の私は、罪のない子供というよりは断罪者っぽい。見た目が死神とか悪魔に見えるからなんというか禍々しいし。それに鎌なんて刃が頭蓋骨の口から生えてるデザインだから視覚的に恐ろしいのなんの。生まれたばかりの私出てこい。――と、骸が手を上げた。片耳にはめた通信機に手を当てゆっくりと双眸を閉じ、開く。


「霧チーム、ヒトヨンマルマル突入。残りゴ、ヨン、サン、ニ、イチ――GO」


 今回は相手が大きいことから複数の場所から侵入することになったんだとか。チームとはいえ構成人数は二人程度。私は初陣だからということで、千種が補助について三人だ。最近やっと千種と犬が話しかけて来るようになって、今は友情(?)を育ててる最中。

 ところで、一番近くの場所から侵入する、つまり一番出くわす可能性が高いのは恭弥のチーム。骸と恭弥の相性凄く悪いのに、ツナは何を考えてるんだか。

 合図とともに走りだし、幻術と暴力の組み合わせで中へ潜り込む。私達霧属性の便利なところは『全てを騙せる』ところだ。カメラの映像さえ私たちの前には無力――騒がれることなくその場の全員を無言の屍と化していく。私は叫ばす暇を与えず首と胴をロミジュリにし、骸は刃を痛めないようにか扁桃腺のあたりから突き上げるように刺し殺す。千種は――どんだけ強力な毒を使ってるんだろうか。

 足音も消し、静かに私たちは侵入を果たした。一分ほど走ると鳴り響く警報と侵入経路の放送。私たちの入った経路もどうやらばれたらしい。きっと連絡を回して反応がなかったからだろう。わらわらと出てきた奴らは皆、同じデザインのごついサングラスもどきを付けていた。


「赤外線が出るようでは一流の幻術師とは言えませんよ――無駄だ」


 クフフと骸は笑い、私たちに気付かぬ様子の彼らを通り過ぎ様刈り取る。彼らはただの末端兵士、幻術等に対抗する術はない。

 そして、私たちは幻術を解く。私たちはあくまで人寄せパンダ――主力は別のところから、時間をずらして突入するから。

 やってきた新手の敵を屠りつつ、私は時間を計る。そろそろ……後十分、あと五分、あと一分――。




 ドガァァァァァァァァァ!!!!




 頭上というには斜め方向から響く爆音。


「ボンゴレですね」

「時間、ぴったり」


 骸と千種がそう言うのに頷き返す。突入から三十分……ツナによる「空中からの」中枢部侵入が果たされた音が、私たちの目的の変更を伝える。これからは「客寄せ」ではなく、「殺戮」を行うのだ――……


「××、いけますか?!」

「うん、パパン!!」


 ここからが本番、幻術で一気に片を付ける。初陣の私がすべきこと、それは実践に慣れること。瞳の数字が変わる――想像を現実にする力。これは、私だから出来ることだ。


「I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)

Steel is my body,and fire is my blood.(血潮は鉄で 心は硝子)

I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗)

Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく)

Nor known to Life.(ただの一度も理解されない)

Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う)

Yet,those hands will never hold anything.(故に、生涯に意味はなく。)

So as I pray,unlimited blade works.(その体はきっと剣で出来ていた。)」


 現代人舐めんな。想像力さえあればなんとかなる幻術師なんだ。

 ――私の想像力で、殺されて。


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