03



 姉さん事件です。私が夢だと思ってたのはどうやら夢ではないようで、転生トリップを果たしてたらしいよ超びっくり!

 気付いた時はすごく驚いた。夢だとばかり思ってたから厨二病患者的な武器にしちゃったし、笑い方とか所作とかの骸の真似なんて今更止められないし――というか癖になったし。クフフは標準装備なんです。


「××、××?」


 さっき、ついオリジナルを張っ倒して逃げてきたんだよね。怒ってるかなぁ、怒ってるよね? 殴られても痛くないけど、怒られるのは勘弁。でもオリジナルも悪いから怒られるとしたら理不尽だよねぇ……。


「××、出てきなさい。殴ったことを怒っていませんから」

「……」


 それは本当だろーか。怒ったらツナに泣きついてやる。


「ああ、××! 探しましたよ」


 ベンチの下から這い出てみれば、オリジナルが私を抱き上げた。ニコニコと笑って××は元気ですね、なんぞと言ってる。頭湧いた?

 数週間前にオリジナルが私を引き取って自分の屋敷に連れてきたわけだけど、私の語学力は飛躍的に伸びた。言語は小学生のうちに習得させるのが良いとか聞いた覚えがあるようなないような。この頃は絵本をクロームに読んでもらうのが日課だ。


「さすが僕の息子、××は頭が良いとクロームも褒めていましたよ」


 息子じゃなくてクローンなんだけど――どうして凪ちゃんがクローム(クローン)で私が息子なんだろうか? 今更名前を変えるのも面倒だからとか?


「ラプンツェルももうスラスラ読めると聞きました」

「うん」


 渡された絵本はラプンツェルと王様の耳はロバの耳、裸の王様の三冊。子供に読み聞かせる童話の王道から微妙に逸れてるけど――オリジナルは分かってるんだろうか。


「××は凄いですね」


 オリジナルは私の頭を撫で、微笑む。私を片腕に乗せるように抱くと歩きだした――今さっき私が飛び出した部屋に向かって。

 それにしても、まさかこれが現実とは――。私にとって凄く都合の良い夢だとばかり思ってたのに、ついさっきオリジナルを見て突然思い至ったんだ。私、イタリア語なんて知らない。知らないのに、「私の」夢の中の住人がなぜこうもイタリア語を話せるのか……そして、なぜ私がだんだんと理解できていってるのか。

 私はオリジナルのポニーテールを引っ張った。ちくそうサラストめ、クローンである限り私もサラストだけど、天パの敵め!


「どうしました、××?」

「オリジナルの髪」


 サラサラってどういえば良いのか分かんない。困って口をへの字にしてると、オリジナルが立ち止り私の目をじっと見つめた。


「良いですか××、僕は貴方のパパンです。分かりますか、パパンです。ほら、言って御覧なさい、パパンと」


 ――なんでだろうか。数日前からオリジナルがしつこい。パパンと呼べと繰り返し言ってくるから、さっきも考え事を邪魔されたのとしつこいのがムカついたから殴って逃げてきたというのに。


「××、ほら、言うんです! パパンと!」


 今のところ言ってやるつもりはないわ……。諦めて大人しくなった頃に言おうかな。


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