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実力のよく分らない守護者候補を集めるより、実力を知っている相手を召喚する方がずっとまし。私がボスになるわけじゃないから本当の守護者になるわけでもなし、一時的に契約を結んで手伝ってもらうのが最適かもねぇ。でもリング戦で初めて出会ってハイ協力しようねなんて言われても出来ないだろうし……定期的に召喚して仲を深めるべきかな。
「だんだんと私が人外化していってる気がするんだよねぇ」
モコナの異世界トリップ能力を買って、私自らヘッドハンティングですよ大変だよ本当に。私の顎を外すわけにはいかないから正面の空間に入口を作って、後ろの恭弥を振り返る。恭弥には後々必要になるから探しに行くって説明してあるけど――不満そうな顔してるなぁ。恭弥の力が足りないんじゃなくて恭弥だけじゃ人数が足りないってことなんだけど、納得できてないみたいだ。
「もともと夏輝は人外でしょ。夏輝に出来ないことってないんじゃないの?」
「え、なにその私のイメージ。私だって苦手なことの一つや二つあるよぅ」
すると恭弥が首をコテンと傾げた。
「たとえば?」
「たとえば――うーん、瞬間移動とか、超能力とか」
「瞬間移動並みに速い足と、超能力としか言えない錬金術があるよね」
「……人の命だけは生み出せないよ!」
「それは錬金術を使うときの制約のせいでしょ」
「まあ、うん」
私って出来ないことないの……か。よくよく考えてみれば、私ってすでに人類ってカテゴリを超越してるよねぇ。これで不老不死になったらもう、どこの化け物? としか言い様がない。
「ねぇ」
うんうん唸ってる私に恭弥が声をかけてきた。
「ん、何?」
「その人探し、僕も付いていって良いかい」
私は考えた。ついでに行く予定の世界で室内以外の場所に出るのを考えて新聞紙の上に靴を履いて立ってる。とてつもなくみっともない。
「来る?」
「――行くに決まってるでしょ」
恭弥は玄関へ向かい靴をとってくると、私の横に並んだ。
「行くよ、恭弥」
「分った」
私と恭弥は宙に浮かぶ魔方陣に飲み込まれ、世界を渡った――。
「ここは……?」
「ここは――どこだろぉねー」
指定したのは『私の晴れがいるところ』だからなぁ、世界まではさっぱり分らない。鬱蒼とした緑は日光を遮るように茂り、時々微かに差し込む光が筋の様になって地面を照らす。幻想的だねぇ、ファンタジーの香りがプンプンするねぇ……。
「とりあえず人を探そうか」
私は円を広げ周囲四キロをまんべんなく探る。――いた、けど……ううん、もしかしなくてもあれは。
「見つかったの?」
「うん、あと十分もせずにこっちに来ると思うよ」
猛獣と追いかけっこしてるから。猛獣が逃げる側だけど。
「お茶飲んで待っとこうか」
水筒からお茶を紙コップに注いで恭弥に渡し、森林浴をしながら相手を待つ。きっと彼が私の晴れなんだろうけど、いや、本当に晴れらしいと言えばらしいんだけど、ゴーラ・モスカ並の身長の人間なんてビックリ人間ショーに出られちゃうよ。人類としての限界を越えた感じがするんだけど。
十分ほど経った。そして現れた、プギィィィ――!! と鳴き声を上げつつ樹齢千年単位の樹に激突してなぎ倒す獣の姿に、恭弥が興奮して声を上げる。
「ワオ――こんな怪物、いるんだね」
「ここにはいるけど、少なくとも地球上にはいないと思うよ」
見るからに強者だと分る私たちがいたからだろうか、怪物は錯乱してグルグルと回り始めた。自分のしっぽを追う犬みたいで空しさが募るねぇ。私は手を下すつもりなんてさっぱりないけど向こうさんがそれを分るはずもなく、命の恐怖に唾液を散らしながら目をぐるぐる回している。
「追いついた――って、お前ら誰だ?」
地面に穴を開けるほどの勢いで駆けてきたのは青い髪をした――トリコ。
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