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 入学式から早一月半、そろそろリボーンが来るんだろうなぁ。……面倒事は増やして欲しくないんだけど。私は錬金で出したD・スペードの魔レンズを匣に戻しため息を吐いた。D・スペードの魔レンズの前では何もかもが浮き彫りになる――それが幻術であれ、何であれ。超直感をも凌ぐこの力は、超直感の使用を控えなきゃいけない私の救い主だ。


「変なデザインの眼鏡だね」

「眼鏡――まあ、眼鏡だね。うん」


 眼鏡というか魔鏡というか。ちなみに私の魔レンズはクロームの使ってる形じゃなくてDスペードが使っていた形のを、柄を着脱可能にしたもの。さっきは柄を外して片眼鏡のように片目に付けて使ってた。しようと思えば片眼鏡だけじゃなくて眼鏡の形にすることもできるけど、気分的にモノクルで。


「何をしてたの?」

「うん――今度転校してくる少年の資料をちょっとねぇ、見てたのよ」


 リボーンが来るのが十八日のはず。二十五日にごっ君が転校してくるって書かれてるから、九代目がリボーンへの依頼と同時に書類を用意させたんだろぉな。流石に前日やそこらに書類を送って次の日から登校――なんてミラクルできるはずないし。どんな書類を送ってきたかと思えば嘘、嘘、嘘っぱち。家族構成にさほどの嘘はないけど実父と亡き実母が結婚してたことになってるし(妾腹だと書けないなら知人の子を引き取ったことにでもすれば良いのに)、実家がとってもお金持ちな城主なことだとか家出してて素行不良だってこととかがさっぱり書かれてない。魔レンズ越しにごっ君の秘匿された情報が、書類から浮きあがるようにして見えた。漫画で知ってることばっかりだねー。


「何か問題があった?」

「ん。問題って言うか、開示されてない情報の多さにびっくりって言うか……」

「編入を却下するかい? ここに入らないなら黒曜に入ることになるだろうけど」


 黒曜は公立のくせに不良が大量に集まった学校だから、ごっ君にはちょうど良いかもしれない。ごっ君も不良だしねー。迷惑って言うか問題しか引き起こさないからお引き取り下さいって感じだよ。でもそうするとツナの最後の味方っていうの? 最大の砦がなくなっちゃうんだよねぇ。あーあ、ツナがデーチモになるの、私反対なんだけどなぁ。エンリコとかなんで殺されちゃったのさ……もう後がないから仕方なくお鉢が回って来たって感がするんだけど。恭弥が巻き込まれるのはほぼ確定してるから私も一緒に巻き込まれるだろうし、私の超直感が目覚めてるって分ったら私とツナを競わせるだろうし。平和に生きたいよ、恭弥の師匠してる時点で取り返しがつかないけどねー。でもあれ、原作の恭弥の何倍も強いはずだよ、今の恭弥。死と隣り合わせな修行を繰り返してきたし、癖は無くさせたから隙はないしねぇ。てかさぁ、恭弥を育てるためとはいえ私ってポイント使い過ぎな気がする。念(錬金)でしょ、料理の才能でしょ、魔術回路でしょ……あれ、おかしいな。私ってチートじゃない?


「ううん、受け入れよう」


 ごっ君がいなくちゃツナは成長できない。今のツナも十分すぎるくらい可愛いけど、超死ぬ気なツナはプリーモ似でミラクル可愛いのさ! だから骸戦、リング戦が早く来れば良いのにって思ってる。恭弥が捕まることだし、私も参加するべきなのかねぇ……骸戦。まだまだ時間があるから考える時間なんて長すぎるほどあるけど、きっと私のことだから参加するんだろぉな。


「これから楽しくなるよぉ」


 ――D・スペードのレンズじゃなくて投影で読めば早かったことに気付いたのは、すぐ後のこと。なんてこったい!


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