08



 幼稚園に行くつもりのない恭弥と、いく必要がない私は今日も公園で修行。――幼稚園に行く前の年齢の幼児たちの姿がないのは巻き込まれたくないからだろうなぁ。バギー押したお姉さん方が、公園を覗いては顔色を悪くして去っていくから。申し訳ない気持ちでいっぱいだよー……恭弥の家って広くないの?


「ね、恭弥」

「何――ですか」

「恭弥の家って庭広い?」

「広いと思う、ます」


 幼児だから仕方ないけど、恭弥は敬語が苦手だ。まあこの年齢の子供の中では美味い方なんじゃないかなぁ? 恭弥ん家って歴史ある日本家屋だってイメージがあるんだけど実のところどぉなんだろ。


「公園は他の人も使いたいだろうし、恭弥の家で出来るならしたいんだけど、どぉ?」

「うん……なら、僕の家で」


 恭弥は少し悩んでから頷いた。それから恭弥の家に行ったらやっぱり豪邸で、この世の不条理って言うか天は二物を与えないなんて嘘だって再確認した。私もそりゃあ親戚がマフィアのボスで父親がそこの門外顧問だけどさ、お札に火を灯して「靴はどこじゃ?」なんてするような生活とは無縁なわけなんだよねぇ。ついこの間まで豪邸に住んでたって言ってもそれを外から眺めることなんてほとんどなかったし、まだ幼いからって外にもそんなに出してもらえなかったし。私、ベルたちと追いかけっこして勝てたんだけどなぁ。

 雲雀宅での修業はなかなか良かった。人の目がなくて遠慮なく恭弥をぶちのめせたし、死ぬ気の炎(弱火)を使ってもボンゴレとかその他のファミリーにバレることがないから安心できた。私がノリノリで念の硬やら流やらを使って恭弥の攻撃を無効化したり吹き飛ばしたりして修行を付けたからか……恭弥はありえんくらい強くなってしまった。その辺の小学生どころか中学生高校生、果ては大人でも対等に渡り合えてしまうようになっちゃったのだ。その恭弥に修行付けてる私が言うのも何だけどさぁ、どうしてそこまで強くなる必要があるのかさっぱり分らないよ、私。――ハッ! もしかして私に負けたのが悔しかったから?! この女、いつか痛い目見せてやるぜ今に見てろ! 余裕綽々のその表情が崩れる様が目に浮かぶぜ!! とか考えてるんだろうか? 恭弥怖い。私が強いのは転生前のお買い物のもあるけど生育環境に多大な問題があったからであってさぁ、チート設定だったんだから仕方ないじゃない。私は元々スポーツ界のプリンセスになろうと思ってこれらを選んだんであって、マフィア界の大魔王になりたかった訳じゃないんだけどなぁ。









 ――とまぁ、そんなこんなで過してる内に恭弥が小学生になり、私も小学生になった。で、現在小学一年生の私はどう暮らしてるかと言うと。


「夏輝、今日の晩御飯は何?」

「恭弥の好きなハンバーグ」


 恭弥と二人で同居しているのだ。奈々さんは渋ったけど私としては生活サイクルに干渉されたくないし、大人として接してくる奈々さんよりも、私を師として敬ってついてくる恭弥と一緒に暮らす方が気楽と言うかなんというか。ツナは――泣き叫んで引き止めてくれたよ? 心の写真館に写して、錬金で現像したけど何か問題が? 私の部屋には可愛いツナの可愛い姿を撮った写真があるのさ!! 全て錬金現像だけどねー。錬金で写真が作れるんじゃないかって気付いた時は、うん、コンビニの店員にお礼を言いに行ったよ。何か買って行けって言われたから「天才的な料理の才能」にしといた。


「夏輝は料理上手だからね」

「褒めても料理しか出ないよ」


 恭弥には、大人を一人でノせた時から敬語の強制を解いている。一介の幼稚園児としての能力を遥かに突破したし、そろそろ免許皆伝でも良いかなと思ったし。その時の恭弥の喜びようったらなかったよ、それからはベタベタベタベタ……ちょ、おま、中学生になっる頃には、群れるなって言いつつ人を咬み殺していく人間のくせに。


「いいんだよ、僕、夏輝の料理大好きだから」


 あまぁぁぁぁぁぁぁぁぁい! 砂糖水の様に甘い!!――原作の「雲雀恭弥」像が崩れてってるんだけどどうしてくれる。ここで「好きなのは私の料理だけ?」とか聞いたらテンプレな答えが帰って来そうで怖い。

 私は肉を捏ねる手に力を込めた。中学生に早くならないもんだろぉか……。


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