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 ゆりかご事件発生三日前に誘拐された夏輝ちゃんだよヤッホー☆ え? 今私が何をしてるかだって?――お菓子食べてまったりしてるよ。

 初めて会った時に「んまー可愛い! 食べちゃいたいわ!!」と言ったルッスねぇの作るお菓子は絶品で、もうヴァリアー止めてお菓子屋さんになれば良いのにと思った。それなら毎日の様に通う。


「ナッキ、王子の姫になる?」

「ううん」

「ナッキ、芸能人にならない? 貢いでくれるならプロデュースするよ」

「……ううん」


 芸能人になるのはまあ――置いておくとして、なんで貢がなくちゃいけないんだろうか。ベルの姫になったら苦労しそうだし、マーモンに貢ぐのは話にならないし、この二人は一体何をしたいんだろうか。そりゃあ初日は怖かったしで身を縮こませてたよ? でもだいたい性格掴めてきたし大丈夫かなーと思って気を許したらこれかよ。なに、なんなの? 二人は私をどうしたいわけなのさ、恐怖のどん底に突き落としたいのならそれらしく行動して欲しいんだけど! ああ、ルッスねぇ早く帰って来て!


「何でナッキがげーのーじんになるわけー?」

「ナッキならすぐに人気になるだろうからね。ボクがプロデュースすればすぐに年収は兆越えするだろうし」


 そして、私が稼いだお金はマーモンの研究費に消える、と。つまり生かさず殺さず、うまい汁を吸い取るための働きアリになれってことなんだろうか? それ酷い、私泣きそう。


「はー? ナッキは王子の姫になるって決まってるし」

「芸能人になってもナッキはベルの姫になれるよ」

「……ナッキ、なっても良いぜ」


 なに説得されてんのー?! そこは引き下がらないで欲しかった!


「ううん。……ならないよ」


 芸能界って怖いって聞くし。私打たれ弱いから、苛められたら泣いちゃう。その時の心のケアはしてくれるんだろうか? お金のためならしてくれそうだけど、私がもう稼げないって思ったら平気で切り捨てる気がする。所詮世の中なんてそんなものなんだよ、シビアなんだ。弱肉強食なんだよ、どうせ私なんて替えがいる働きアリさ!!


「チェッ、面白くねーの」

「なりたくなったらいつでも言ってね」


 きっとそんな日は来ないだろうなーと思いつつ頷いておく。だって怖いし。

 ――でも、ちょっと怖かったけど、平和だったんだ。だから三日後にお父さんが迎えに来た時、凄く寂しかった。ザンザスは怖いけど恰好良くて憧れたし、ルッスねぇはちょっと気色悪かったけど優しかったし、スクアーロは声がうるさかったけど面倒見良かったし、ベルもベルなりに気を使ってくれてるのが分ったし、マーモンも「時間の無駄」って言わずに私の相手してくれた。レヴィは――まあ、良く分らなかったけど、酷くはなかったと思う。だから。











「夏輝ちゃん、何書いてるのー?」

「お友達に、お手紙」


 ツナがいない、静かな家の中。奈々さんが手紙を覗き込み、首を傾げ訊いてきたからそう答えた。


「あら、あっちにお友達がたくさんいたのね!」

「うん」


 出会ってから数日で別れた関係だけど、手紙のやり取りをすることになりました。――これで再会した時の死亡フラグ回避出来たら良いなぁ。


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