03



 この餓鬼の名前は、夏輝。あのいけすかねー門外顧問の娘で、ボンゴレの血を引いている。


「悪くないよ」


 オレはこの餓鬼を気に入っていた。無駄口きかねーし、うろちょろしねーし、言うことを良くきく頭の良い餓鬼。――だから、人質にするつもりだった。この餓鬼以外にもボンゴレの血を受け継ぐ奴らは何人もいる。この餓鬼が死んだとしてもボンゴレの痛手にはならねーし、知恵のついた煩い奴らよりもこの餓鬼の方が人質には便利だ――こいつに決めたのは、そんな理由だった。

 ナッキはオレの手を撫でながら微笑んだ。自分が殺されると理解した目だった。澄んで、全てを許していた。抱き上げ、ナッキの腹に顔を埋める。餓鬼らしく乳くせぇ匂いに、柔らかい体。罪を知らぬ無垢な存在なのだと――そう、思えた。


「許せ」


 気が付けば許しを乞うていた。人質とすることに変更はねぇ――が、傷付けるつもりもねぇ。人通りのない廊下で良かった――こんな情けねぇ姿なんて見せられるはずがねーからな。


「悪くはしねー。ただ、お前はいてくれるだけで良い」


 ヴァリアー邸にいてくれたらそれだけで良い。ルッスーリアが何か作るだろうから、こいつが菓子でも食ってる間に終わらせる。

 ナッキがオレの頭を撫でた。











「ボンゴレ十代目になるのは、このオレだ」


 目覚めれば八年という歳月が過ぎていた。ナッキはいない――あの後日本へ渡ったのだと言う。あれから十年近い歳月が過ぎている……ナッキはオレを覚えていないだろう。あの時まだ四つだったんだ、覚えているはずがねー。


「とぉぜんだろー、ボスがなんなくて誰がなるってのー?」

「日本旅行なんてステキ! KAWAIIウォッチが楽しみだわ」

「特別手当は出るのかい?」


 日本に向かいリングを奪うことを伝えれば、それぞれが気ままな返事をした。そして。


「ナッキちゃんに会うのも久しぶりねー、もう五年になるかしら」


 ルッスーリアが零し、


「シシ、リングをゲットするのは当然だし、ナッキメインだから」


 ベルが笑い、


「ム。そういえば十代目候補はナッキじゃないよね?」


 マーモンが首を傾げた。


「……お前ら、ナッキとどういう関係だ……」

「「「ボスが連れてきてから定期的に連絡を取り合う関係」」」


 横でレヴィ・ア・タンがオレも……と頬を染めて手を上げている。カスは――気絶してるが、きっとこいつらと同じだろう。――オレが、眠っている間に、こいつらは。


「ドカスがっ!!」


 カスの頭にワイン瓶を投げつけた。


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