私のお姉ちゃんは誰よりも優しくて、強くて、私の自慢。だけど『私の』お姉ちゃんは今、ピンク色の頭の赤ん坊に取られちゃった。あの子は邪魔、お姉ちゃんを取って、邪魔。


「私、マチなんてきらい」


 捨て子だったマチを拾ったのは私。でも、拾わなきゃ良かったって思ってる。だってお姉ちゃんが取られたんだもん。


「マチを拾ったのはパクだろ」

「――うん」


 でも、嫌い。嫌い。嫌い。お姉ちゃんは私だけのお姉ちゃんなのに。


「××姉はパクのことぞんざいに扱ってるのか?」

「ううん……」


 分ってる。お姉ちゃんは前と同じように私に笑いかけてくれるし、頭を撫でてくれるし、ご飯を作ってくれる。でもお姉ちゃんの中の優先順位が変わった――私の次にあの子がいてることがいやだ。お姉ちゃんは私だけ大事にしてくれなきゃいけないのに、私にだけ笑ってくれれば良いのに、あの子は当然みたいに与えられてる。


「毎日おまじないだってしてくれるし、だきしめてくれるし、いっしょにねてくれるけど、あの子が泣いたらお姉ちゃんはマチのほうにいくのよ!」


 だから嫌い。嫌い。嫌い。


「パク、おまじないの意味覚えてるか?」

「おぼえてるわ。『パクがびょうきになりませんように』って」


 健やかに育ちますように、幸せに過ごせますように、と。――ああ。


「それが××姉の想いだと、オレは思う」


 そうだ。――嫉妬して、どろどろとした思いでいっぱいになってたから、分らなくなってた。

 お姉ちゃんはいつも私の幸福を願ってくれてるんだって。お姉ちゃんがマチの世話をするのは『私が連れ帰ったから』だって、分ってたけど気付かなかった。


「ありがと、クロロ」

「どういたしまして」


 今日は早く家に帰ろう。きっとお姉ちゃんが、美味しい夕ご飯を作ってまってくれてるだろうから。


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