あんなのはゴンじゃねぇ、試験官ごっこの時に一緒にKillしちゃえと、思ってたんだけど。どうやら名も知らぬ彼女は憑依トリップだったようで、本当の体の持ち主であるゴン君と体の支配権を奪い合ってるようだ。時々原作ゴン君が顔を出すからそうだと思う。


「キミが誰だか知らないけど――『彼』に体を返した方が良いよ?」


 試験官ごっこでヒソカが血飛沫を上げて喜んでるところに、レオリオとクラピカを助けに来たゴンもどきがやってきた。ルアー? 当たったわけないじゃん。

 私――というかヒソカと向かい合うゴンもどきはどうやら私も攻略キャラとしてロックオンしてるらしく、目つきが厭らしい。

 原作ゴンを殺すと色々不都合が出るから殺せない、でも警告だけはしておこう。私はヒソカにお願いして彼(?)を殺さないようにした。


「――なっ!」

「クククク……ボクが気付かないとでも思ったかい? キミの目は濁ってるけど、時々澄んだ目が顔を出す――その体の本来の持ち主、だろ☆」

「な、に馬鹿なこと言ってるのさ?! オレがゴンだよ!」


 その台詞がおかしいことに気付いてるんだろうか。この場合『オレはオレだよ!』が正しい。


「早く『ゴン』の中から出ていくんだね☆ ボクは『ゴン』なんて本当はどうでも良いんだけど、その目が――気に入らないんだ☆」


 もしこのゴンもどきが真面目な子だったら、原作沿いに進行してくれるなら文句はない、と言ってただろう。でもこれはないわー。


「なに言ってるのか分んないよ……」


 ゴンもどきが目を逸らしつつ言った。――よし、遊ぼう。このゴンもどきをおちょくって遊ぼう。なんてったって私の念能力は転生者をおちょくるには打ってつけなのだ。


『ヒソカ、殺さないでね。面白いこと思いついた』

「分った――じゃね、ゴンと名乗ってるキミ」


 小声でヒソカが頷いて、気絶したレオリオを回収し二次試験会場に向かう。ギタちゃんことイルミとはだいぶ前に知り合った仲で、私とも『ヒソカ』とも面識がある。呼びにくいと顔をしかめてた。猫目美青年萌えっとこっそり叫んだんだけどビアンキたちにはバレた。











 何もかもが順風満帆だと思ってた。クラピカとも親しくなったしキルアとも友達になれた――そう、思ってたのに。


「キミが誰だか知らないけど――『彼』に体を返した方が良いよ?」


 まだこの体の前の持ち主のゴンは消えてなくて、私の中で暴れまわっては支配権を奪い返そうとする。だからよくよく見たら私は不安定だと分る……でも、クラピカやキルアにはバレなかったのに! 何で? 何で? どうして? よりにもよってヒソカにバレるだなんて! 子ども組は稚児にして、アダルト組を私のハーレムにしようと思ってた。なのに、その一人にバレた……。


「じゃね、ゴンと名乗ってるキミ」


 ヒソカはそう言って、レオリオを担いで行ってしまった。クラピカと試験会場に向かいながら考える。どうすれば、どうすればヒソカの考えを打破できる?


「――なんで、あれは」


 二次試験が始まって、ヒソカはアニメ通りフランス料理を出して不合格を言い渡された後消えてしまった。きっと湖の畔で膝を抱えてるんだ。

 この中のもう一人のアダルト組というべきギタラクルはどうしたんだろうと彼を見れば、その隣に明るい茶髪の美女を見つけて茫然とした。


「ビア……ンキ」


 ギタラクルに指示を出して握り寿司を握らせる彼女はどう見てもビアンキで、頭の中がこんがらがるのが分った。

 なんでなんでどうしてどうして? ここは混合世界だったの? ヨークシンのマフィアの一角? でもそうだとするとどうしてそのマフィアがイルミと仲良くしてるの。

 原作沿いにするつもりはさらさらなかったけど、これだと始めから原作沿いになる要因がない。試験内容以外はオリジナル展開のクロスワールド? そんなの困る。どうすれば、どうすれば?







 ビアンキが周囲を見回して、クスリと笑んだ。その笑みの理由を、彼女を見つめていた者は誰一人として知る者がいなかった。


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