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「あーっ! お前ってばもしかして! オレの代わりの!」
「ああ思い出したの? なら言うけど、どうしてあんなに嫌がったのか言って。理由が分からなくちゃどうとも言い様がない」
一次試験が始まろうというその教室内で、いささぎカイトが大声を出して私を指差した。
「だってよ、だってよ……。それにオレ、こっちに来る時にあそこでの記憶しか残してもらってないんだってば。なんであんなに嫌だったのかも覚えてねーんだってばよ」
「さよか。それならせいぜい私以上に苦労してくれ。それが私への償いになるから」
いささぎカイトはどうやら私とのことを思い出したみたいだ。天界で『本来ナルト君になるはずだった子の記憶を少し残しておきますから、思い出させて償わせることもできますよ』と担当の美中年が言ってたからなぁ。苦労してくれ、と言っておこう。私は私の命くらい守れるから、守ってほしいとは言わない。それに特典のおかげで九尾とは話が付いてる。私の命に危険が迫った時、代わりに九尾が私の体の支配権を(一時的に)得て敵を滅殺する。我ながら危険人物だよね。
「なに、どうしたのよカイト? こいつと何かあったの?」
サクラが私とカイトを見比べる。サスケなんて私を睨んできてるよ。私の代わりなのか我愛羅が睨み返してるけど。
「オレがこいつの人生狂わせたんだってば……」
「ぴんぴんしてるじゃない、それなのにどうして」
「いささぎカイト、これ以上私は私のプライバシーを晒したくない。それにあんなこと信じるやつがいるとは思えない。黙ってて」
「わかったってばよ」
人生を狂わせた、という単語にサスケが反応してカイトを見やる。サスケも里に人生を狂わされたといえるからね。それともウチハに、かな。
「風歌」
「ああ、分かってるよ我愛羅。じゃあ」
思い出してくれなくても良かったんだけどね。思い出したら思い出したであのいささぎのこと、絶対騒ぐと思ってたんだ。本当に迷惑な時に思い出すなぁ、私とカイト、つまり私が木の葉と面識があるってバレちゃったじゃないか。それも過去に何かあった、みたいな印象残してくれちゃってさ。私ももう腹くくったけど、もう少し場所を考えて言って欲しかった。私がなるべく分かりにくいように言葉を選んだっていうのに全く。
「風歌……行くな、どこにも」
「我愛羅、私の隣は我愛羅だけだよ。七年前からずっと」
私の肩に額を押し当てて我愛羅が唸る。そのまだ成長途中の背中をさすりながら答えれば、ギュっと抱きしめられる。うーん、なんだかママの気分。男だけどね。
「我愛羅、一緒に中忍になろう。な?」
「ああ」
私の本名がいささぎカイトの口からバレるまで、あと数日。
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