私は目の前で暴れまわる――というか、愚図って物に当たっている魂を見てため息を吐いた。この魂がさっさと転生してくれないと、私の順番が物凄く遅れてるんだけど。同じ十月十日に転生するってだけで、私とこいつにはさっぱり縁もゆかりもない。その他の十月十日転生者たちはもう転生先を決めてまったりと過ごしていると言うのに、何故私はこいつなんかの後ろに並んでしまったんだろうか。もう一時間くらいああやってゴネてるから私も疲れた。元々長時間立ってられる脚じゃないんだ、はよ終われ。


「困りましたね……」


 担当者らしき美中年が麗しいため息を吐く。美形は何をしても美形だから羨ましい。じっと見つめていると美中年がへにょり眉尻を下げながら私に声をかけてきた。


「すみません、貴女はまだ転生先を決めていませんでしたよね?」

「あ、はい」


 転生する者は皆、次に自分の親となる人の顔を見る権利が与えられている。だから転生先を決めた人はもう移動不可なのだとか。で、私に何を言いたいんだ。


「彼の代わりに転生していただけませんか? 貴女の世界ではそうですね、NARUTOという漫画になっていたと思うのですが」

「ちなみに、誰に転生しろ、と?」


 十月十日が誕生日のナルトキャラなんて……嫌な気がするんだけど。


「うずまきナルトです」

「全身全霊でお断りします」


 私の方が御しやすいと思われたのか、色んな特典を付けられて私は転生した。なんたること。











「我愛羅」

「風歌」


 明日は中忍試験だ。今はそのために木の葉の里に七年ぶりに来てる。


「遅かったな」

「団子を買ってきた。食べるでしょ」


 笹の葉に包まれた串団子を持ち上げて笑めば我愛羅はコクリと頷く。


「ザブさんとハク君も食べるだろうか」

「さあ、ハクはともかくザブが甘味を食べるとは思えないんだけど」


 テマリさんが団子の包みを見ながら苦笑し、私たちはその場を離れようとした――漫画で見覚えのある場所とキャラだったからさっさと離れたかったってのもある。はやく宿に行ってハク君とお茶したい。


「誰だよテメー! オレを無視すんなってばよー!!」


 さっさと踵を返した私に、なんだかアレレな声が聞こえてきた。振り返ってみれば、金髪じゃなくて頬に三本線もなくて青目じゃないナルトがいた。


「……誰?」


 この声、十二年前に聞いた記憶がある。駄々をこねて『オレはこんなのヤダってばよー!』などと言っていた。しつこいくらい聞かされて、とばっちりまで受けたから良く覚えている。


「へへっ、オレはいささぎカイト! 次の火影になる男だってばよ!」

「……さよか」


 巻き込まれ損じゃない。私の平穏な人生を返せ。


「テメーみたいな女になんか負けねーってば!」


 ズビシ!! とカイトが指差したのは私で、横で我愛羅が顔をしかめた。人を指刺しちゃ駄目だって教えたからね。


「私は男なんだけど」


 どうやら私はクシナさんの血を濃く継いだらしく四代目の雰囲気を残しながらも美少女顔(これは嬉しい特典だった)で、髪も肩にかかる位の長さだから男には見えない。自分でもそれが分ってるから怒りはしないんだけどね。


「え、男――……」


 横でピンク色の髪をした女の子――きっとサクラちゃんだろうな――が顎を外してて、サスケは視線を上下させて私の全身を見た。ナルトってかカイトは指先が丸まってる。


「私は、男だよ。話はもう良いよね? じゃあ失礼」







 宿に着いてからザブさんとハク君こと再不斬さんと白君に団子を渡したら、二人で甘い雰囲気作って食べ始めた。久しぶりに会ったけど二人ともラブラブだね。


「風歌……」

「なに、我愛羅?」


 甘い雰囲気に感化されたのか、我愛羅が私を抱き込んだ。テマリさんが気を利かせて部屋を出ていく。いや、気を利かせたっていうよりは甘い雰囲気に耐えかねて。ごめんテマリさん。


「ここがお前の生まれた場所なんだろう」

「まあ、そうだね」

「帰りたいとは……思わないのか?」

「あんまし。我愛羅のそばのが落ちつくし、わざわざ逃げ出した場所に帰りたいと思うようなマゾじゃないしね」

「そうか」


 我愛羅の頭をヨシヨシと撫でる。ナルトに転生して良かったことは我愛羅と仲良くなれたことだね。


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