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この身体はもともとクシナさんという立派な忍者のもので、それをそのまま受け継いじゃった私の身体能力も生前より上がった。
「おっと」
食器を洗ってるとついうっかりガラスコップを握り割り、バラバラとこぼれるそれにまたやっちゃったなーと空笑いする。
「クシナさん手だいじょうぶ?」
「んー、大丈夫。そんな柔な肌してないから」
どんだけ固いんだクシナさんの肌。面の皮じゃないだけましだけど傷一つ付かないってどういうことだ。どんな修練すればここまでの肌ができるんだかものすごく気になる。
「ナルトは触っちゃ駄目、怪我してしまう」
「はーい」
ナルトは可愛く片手を上げて返事をした。この年齢の子供は可愛いなと思うけど、なんか時々ナルトが年齢以上の知性を見せることがあるからもしかして将来はスレナルじゃないかとも考えてる。スレナル良いね、あこがれるね! 大好きだよスレナル!
「ん、良い返事。頭のよい子は好きだよ」
「クシナさんはオレが頭良かったら嬉しいの?」
「当然。ナルトは頭よい子だからとっても好きだよ」
まあそれは裏返せば頭の悪い奴は嫌いだって言ってるのと同じなんだけどね。私は頭の悪い人間と無知のくせにそのままでいる馬鹿が嫌いなんだ。時々封印の中のきゅーちゃんに会ってるけど、きゅーちゃんも物わかりの良いから好きだなぁ、下僕として。そのうち腹の中から引きずり出して町中を散歩させてあげよう。封印の中じゃ運動不足でだるいに違いない。野生動物は強者には服従するから人間より信用できるよね。
「頭の良い子になってね、ナルト」
かいぐりかいぐりと頭を撫でれば嬉しそうに笑うナルト。
「うん! オレ、将来は火影になるんだ!」
うむ、是非格好良い火影になって私の老後を楽にして欲しい。ただでさえクシナさんの身体に入ったことで逆サバ読むことになったんだから悠々自適な老後くらい過ごしたって良いでしょ。ここ数年で得意になった家事になんだか家庭臭さを感じながらナルトに今日の晩ご飯のリクエストを聞いた。オムライス……スレナルは夢のまた夢なんだろうか。
数年経って、自分がどうやら老けていないことに気が付いた。不老か――なんか他の里から狙われそうだ。髪も爪も伸びるのに体重の増減がないし、今のところ毎日顔を合わせてる人たちは気付いてないみたいだけど、数年ぶりに会う人たちにはバレるな……そのうちみんなにバレるだろうし、どうせいつかはバレるんだから今慌てて言わなくても問題ないでしょ。なるようになるさ、きっと。
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