九尾の狐こときゅーちゃんは私の言うことを聞く良い子。きゅーちゃんが言うには、どうやら私の魂はこの世界原産じゃないせいか高エネルギー体、つまり莫大なチャクラの塊らしい。私が自爆したら里の三つや四つは簡単に吹き飛ぶらしいから驚きだ。最高で国一つが地図上から消えるといわれたらそりゃあ……自分が危険人物だって分るよ。核兵器みたい。なんてこった。


「ただいまクシナさん」


 本当のうずまきクシナの息子であるナルトは私を慕って懐いてくれる。この子の親だという気持ちにはこの十年一緒に住んでるけどさっぱりなったことがなく、大家と住人のような間にしか感じられないのは問題なのかもしれない。だけどどうしようもないことじゃないか、産んだのは私じゃなくてクシナさんで、この体ももともと私のものじゃないんだ。クシナさん、とナルトが言うたびに奇妙な気分になる。


「お帰りナルト」


 アカデミーに通い始めて数年の、成績は私が見る限りトップクラスのはずのナルトは今年も落ちてきたようだ。どうして落ちてるんだか――旧家の子息子女の護衛だったりして。スレナルなら鉄板だよね。


「今年も落ちてきたんだね」

「うん。怪しい動向の奴がいるから、オレで炙り出そうと思って」

「ふーん、今年こそは額当てもらってくるんだよ」

「――うんっ!」


 頭をなでながら言えば、嬉しそうにナルトは笑った。夕方になってまた出て行ったナルトは原作通り三代目のお宅に不法侵入したらしい。






「我々はあの狐のガキを捕えます。クシナ様の養い子であることは重々承知しておりますが、里の平和のため、捕縛ともしもの場合の処理の許可を頂きたく」


 忍びの中でもお偉いさんなんだろう目つきのキツい男が私に許可をもらいに来た。


「ナルトはどうやらまだまだ悪戯好きの子供みたいだね。子供の悪戯だ、そこまでピリピリする必要はないよ」


 外側の怪我に目くじらを立てるより先に、内部のガンを取り除くことに精を出せば良いものを。裏切りはすぐ近くにあるというのに。


「養い子が罪を犯すはずがないと思っていらっしゃるのかもしれませんが! あれは狐です! 狐が人の姿をとったのみのこと、クシナ様が庇うことはありません!」

「さっきから養い子養い子って言うけどね、あの子はうずまきクシナが腹を痛めて産んだ実の子供だよ。勝手に養子にしないでくれないかい」


 男は初めて聞いた、とばかりに目を見開いた。市役所に行けば、私とナルトが血の繋がった親子だと知ることができる。というのに、私が慈善事業でナルトを引き取ったとでも思っていたようだ。てか、ほとんどの人間がそう思ってんじゃなかろうか。おい、そしたらクシナの産んだ子供はどこ行ったと言うんだ。死んだとでも思ってたのかバーローめ。


「クシナさんっ」


 捕縛は許さん、消えろボケナスと男を追い払い、それから一時間ほどしてナルトが帰ってきた。私に抱きつき年季の入った額当てを見せる。でもナルト、もう何年も前にもらってるよね額当て。


「お帰り。やっとこれで下忍だね」

「うん、これが火影になる第一歩……。見ててねクシナさん」

「当然だよ」


 泥だらけのナルトを風呂に放り込み、フっと笑った。原作が始まり、ナルトは歩き出した。これからどんな道を歩んでいくのか、私がいたことによりどう変わるのか、それがすごく楽しみだ。


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