これからどうすべきかと考えてると、医者らしき白衣のおっさんが回診に現れて「お目覚めになったのですね!」云々と喋り出した。あんた誰、ここはどこ? という内容のことをもうちっとオブラートに包んで聞いたら、どうやら名前を知ってる程度にはクシナさんと顔見知りだったらしいその医者は真っ青な顔して病室から走って逃亡した。クシナ様がぁぁぁぁぁぁぁ!! とか言いながら。あ、やっぱ私がクシナさんなわけね。

 それからイノイチさんだっけ? の問診受けて、記憶喪失ということになった。喪失したんじゃなくて元々ないんだよとか言ったら変に思われれるだろうな確実に。でも何度か口が滑ってナルトって言ったんだけど、そこらへんどう判断されたんだかなぁ。


「クシナ様」

「……はい?」


 やべぇ、医者がクシナさんの名前呼ぶの聞くと「イイ歳こいてアニメキャラの名前を呼ぶとかスゲー痛い」とか考えて、返事するのに一瞬悩む……。


「ナルト様……クシナ様のお子です」

「ナ、ルト?」


 医者が抱っこしてきたのは生まれてまだちょっとしか過ぎてないから顔の皺が伸びきってない赤ん坊で、でも頬に三本線が入っててどうみてもナルトだった。可愛くない。私、赤ん坊って苦手なんだよね。それにナルトはクシナさんの子供かもしれないけど私の子供なわけじゃないし、猿顔を可愛いと思えと言う方が無理あるよ。


「抱いてあげてください」


 そう言って渡されたのはふにゃふにゃの軟体動物で、持ち方間違えたら気管圧迫して窒息死させそうだった。怖いな赤ん坊。力加減が分らないから怖い。捻り潰しそうで。これでも私握力と腕力がある方で、てか鍛えてるもんだから時々マウスを指で叩き潰したりコーラの缶を握り潰してベトベトの噴水上げたりしてきた。悪気はないんだけどな。さっき腕の筋肉の付き具合見たら素敵に鍛えられてたし、きっとここでも私色々と握りつぶしそうだ。グシャ、プシャー! みたいな勢いでナルトの頭握りつぶしちゃったら原作始まらないよね。


「そう――頭の後ろに腕を回して、そうです」


 こわごわとナルトを受け取り、医者が言うように抱きなおす。本当に、ナルトには早く育って欲しい。早く育ってくれないと私が力加減間違えたとき怖いことになる。ナルト死亡、短い間でしたがご愛読有難うございました〜NARUTO完〜みたいな。うわぁ恐ろしい。


「早く大きくなって」


 早く大きくなって、そんな心配をしないですむようにしてちょーだい。――てか、ナルトは私が育てるのか? 怖いよ、私が。


「クシナ様……!」


 横で医者が感涙にむせんでたけど、そこらへんはスルーしたい。一体何が彼のツボにダスンといったのかさっぱりだから、ただの電波系にしか見えないんだ……。


4/8
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