「僕はアルティメット・シイング! アルティメット・シイングとはッ! ひとつ、無敵なり! ふたつ、決して老いたりせず! みっつ、決して死ぬことはない! よっつ、あらゆる生物の能力を兼ね揃え、しかもその能力を上回る!」


 仗助さんが『花園さん』と呼んだ男性は、まるで宣言するかのようにそう叫んだ。かっちりした黒い上着に逆三角形のサングラスをして、アメリカンチェリーみたいな色の髪の右側だけを垂らした見た目だ。さっきまで顔が赤くフラフラしてたことから病院に行こうと思ってたんだろうけど、普段着っていうより特攻服っぽい恰好だ。


「なんだ、そのアルティメット・シイングとは……究極の存在だと? 何を馬鹿なことを」


 キラが花園さんの言葉を馬鹿にして鼻で嗤った。


「馬鹿なこと? いいや違うね。僕は親切で教えてやったのさ。僕という存在を敵に回したらどうなるかを、これからお前には死という結末しか残っていないということを!」


 ズアッとポーズを決めた花園さんは自分が負けるなんて一ミリも思ってなさそうだ。なんでこんなに自信満々なんだ!? だって、だって……花園さん、花園さんはお腹に穴が空いてるのにッ!!


「花園さん、あんたは腹に穴空けてるんだぞッ!!」


 仗助さんがキラを睨みながらそう怒鳴る。


「仗助くん、君は億泰くんを治すことを最優先に考えるんだ」


 あることに気付いた瞬間、花園さんから目が離せなくなった。キラの目もどうしようもなく花園さんに固定され、それを不審がった仗助さんがちらりと花園さんを振り返る。

 花園さんのお腹の穴が見る間に埋まっていくッ!! 血の跡と穴の空いた服はそのままなのに、どんどん肉が盛り上がっていって――遂に穴が無くなったッ!


「僕は首から下が噴き飛ぼうが腹に大穴が空こうが、決して死ぬことはないッ! 爆発魔くん、君は不死の怪物を相手にずっと戦い続けられるかい?」

「ふん、貴様のスタンドは治癒能力の向上か。だが粉みじんに肉片一つとして残さず爆発すれば貴様もどうしようもない!」

「さて、試してみたことがないから分らないよ。――仗助くん! 早く億泰くんを治すんだ!! そしてそこの少年、承太郎たちを呼びに行け!」


 ――治癒能力の向上ってことは、仗助さんたちと同じように考えると、花園さんには肉の壁になる能力しかないってことになるッ!! でも、でも……花園さんがこうして盾になってくれるからこそ、僕は助けを呼びに行かなければならないッ!

 見えない速さでキラの前へ飛び出た花園さんは、その勢いのままにキラを殴った! 見えない何かにガードされたお陰で無傷……かと思ったら、キラの両腕に刀傷ができたッ!! 腕が変形して尖ってる!?


「よし、億泰〜〜これでおまえを治せるぜッ!」


 その隙に仗助さんが億泰さんに駆け寄り治そうとした、その時、キラの表情がニマーっと変わった! もしかして――そんな!!


「触っちゃダメだァーッ! まさかッ、ひょっとしてッ! 億泰さんの『体』を今、ヤツはッ!!」


 キラが舌打ちした!――どうすれば、どうしよう!!

 花園さんが、そんなグルグル考えてるぼくに向かって微笑んだ。


「僕は死なない体だからね。行っておいで、ここは僕がなんとかする」

「――う、うんッ!!」


 キラが顔を盛大に歪めながら待てって怒鳴ったけど、花園さんたちならなんとか出来るって確信がある! だから、だからこれは戦略的撤退ってヤツなんだッ!!

 追いかけてくる空気爆弾を花園さんが受け止めてくれたり潰してくれたりしてようよう逃げ切った。


「助けてください!!」


 すぐ戻るから、仗助さん、花園さん、無事でいて……!!







 川尻早人が呼びに来たことで現場へ急行したおれたちが見たのは、額のあたりから鳥の飾り羽のような色鮮やかな羽根を二本生やした花園が、袖が吹き飛んだ剥き出しの腕をだらりと垂らして立っている姿だった。

 焦げて短くなったらしい前髪の隙間に角のような突起があるのを見たじいさんが目を見開き「柱の一族ッ!?」と叫んだ。柱の一族……確かじいさんが若い頃に戦った超人の一族だったか。しかし、柱の一族は太陽光の下へ来ることができないのではなかったか? それに、あの角の位置は――花京院に埋められていた肉の芽があったのと同じ位置ッ!!


「どうしたの、僕を粉みじんに吹き飛ばすんじゃなかったかい? ねえ吉良吉影。この通り僕はまだ五体満足なのだけど」

「化け物がッ……貴様は化け物だ! 何故死なない、何故、何故頭をふき飛ばされてなお生きているッ!! お前は一体ナニなんだ!?」


 尻もちをついた姿の川尻浩作――いや、吉良吉影が、花園を指差し悲鳴を上げる。頭をふき飛ばされても死なない、だと? つまり花園は頭をふき飛ばされたのにもかかわらず生きているってことになる。仗助のいる位置からしてクレイジー・ダイヤモンドによる修復ではないから本人の力か。見れば腹にも穴が空いていたらしく、元はしっかりした生地の上着だっただろう服には前後に大きな穴が空いている。濃いクリーム色のそれに血が染みて赤黒く変色していた。腹に穴、か……嫌なもんだ。

 怯える吉良吉影に花園はズアッとポーズを決める。


「答える必要はない――と言いたいところだが、さっき教えてやったじゃないか。僕は人間ではないッ!!」

「あれはぼくを守った蔓ッ!! ということは、あの時ぼくを守ったのは花園さんのスタンドだったのかッ!!」


 花園のスタンドが発現し、その懐かしさを胸に響かせる見た目のスタンドに露伴があっと声を上げる。花園のスタンドは白い人型の岩で、その体を蛍光グリーンに輝く蔦が這っている。似ている――花京院のスタンドと似ているッ!


「僕のスタンドでは君を裁くのには向いていないし、仗助くんのスタンドもそうだ。だから、君を裁くのに相応しいスタンドを持つ人を呼んでもらった。承太郎、君なら出来るはずだ……拳銃の弾さえ掴めるスター・プラチナならばッ!!」


 何故おれのスタンドを知っているかなど、もうわざわざ聞く必要などないことだろう。こいつは……こいつは花京院だ。

 スター・プラチナを発現して吉良に近寄る。地面をずりずりと尻で這う吉良吉影の五メートルほど前で立ち止まり、スタープラチナ・ザ・ワールドを発動した。拳を振り上げ……連打!!


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァ――ッ!!」


 何故今までおれから隠れてコソコソしてやがったのか、後でたっぷり絞ってやるぜ、花京院!!


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