その26



 手に汗を握って見守るレオリオに対し、オレたちは完全にクロロさえも無視してパーティを始めてる。


「バーベキューセットってある?」

「あったかな」

「ないと思うよ。持ってても長期いるわけでもない仕事場に持ち込まないでしょ」


 クロロ君のプリンを食べるわけにもいかず、でも皆がそれ以外の全部を物凄い勢いで食べてしまった。クロロ君が必死に食いついてくるクラピカをあしらって遊んでるせいで予想以上に時間がかかってるせいもある。


「盗ってくるか? バーベキューってことは肉もかっぱらってくりゃ良いんだろ」

「いや、オレが行くからお金くれる? 誰か現金かカード持ってるなら貸してくれないか」


 クラピカの背中に乗り上げたクロロ君が「え、兄さんオレの雄姿は……」と声を上げてるけど、悠長に遊び過ぎてて暇だったんだもん仕方ないよ。雄姿は始めの二分くらい見た。


「早く殴って昏倒させるでも縛りあげて蓑虫にするでもして、一緒にバーベキューしよう」

「あ、ああ!」


 崖の横に避難して二人の戦いを見てたレオリオが「オレの目がおかしくなったのかな」と瞼の上から両目を揉んでるけど、これが蜘蛛の実態だよ。ゴンたちもレオリオに聞こえないだろうに「ギャップあるよな……」「同一人物かって思ったもんね」と頷いてる。

 クロロ君は足の下で暴れるクラピカの頭を笑顔で殴り、ぐったりと倒れたクラピカを俵担ぎして崖の上へ飛び上がる。どさりと地面に落とされたクラピカを、フェイタンがどこから取り出したのか針金を編み込んだ細縄で縛り上げていく。


「訓練でもしてない限り、これから縄抜けするのは不可能ね。団長、コイツはどうする?もう二度とワタシたちに反抗する気を失くさせておけば良いか?」

「いや、適当にそこらへ転がしておけ」


 フェイタンはコクリと頷くとクラピカを足で蹴って転がし始めた。キルアは目元に手を当てて「あちゃー」と呟き、ゴンはフェイタンにぷりぷり怒り始める。


「何でそんな風にクラピカを転がすの!?」

「団長に遊ばれただけと言ても、コイツはただの捕虜ね。捕虜をどうしようとこちらの勝手よ」

「でも!」

「分らないか? ウボォーは一度コイツに殺されてるよ。命を奪わないだけマシと分らないか?」


 納得できないと顔に書いてるゴンの髪をくしゃりとノブナガが混ぜる。


「ま、納得しできなくても良いんだよ。これがオレらの流儀で、オメーの持ってる信念とは違うだけってこった」

「うーん……」

「オレらにはオレらのルールがある。お前にもお前のルールがある。分るか?」

「分る、けど。クラピカはオレの友達だから、蹴って転がしたりしないで欲しい」

「それならフツーに言えば良い。友達だから、不必要に雑には扱わないでくれってな」

「そうなの?」

「そーなの」


 もう既に師匠と弟子になってるみたいなんだけど、二人にその自覚はあるんだろうか?

 見てたら買い物に行けないので、手を叩いて注目を集める。


「ちゅうもーく! これからオレは街へ買い出しに行ってくるけど、バーベキューで焼きたい食べ物があるなら今言うよーに!」


 崖の下で「何してんだあいつら!?」というレオリオの声がする。


「はーい、シイタケが食べたい」

「かなり豪華な具材だね。でもヨークシンでシイタケが手に入るか分らないので期待しないで待っててね」

「肉!!」

「肉はもちろん買ってくるよ。気持ちが分らないではないけどさ。鶏肉とか豚肉とか、指定は無いの?」


 シズクとウボォーのリクエストに続き、フランクリンが口を開く。


「ならサーロイン、フィレ、イチボ、ハツ」

「高い部位ばかり言うね」

「皆さん、野菜も食べましょう! 肉ばっかりでは病気になりますよ!」

「有難うシャル。玉ねぎと南瓜とピーマン買うわ。ネギも」

「海鮮バーベキューってのも良いと思うぜオレぁ」

「なるほど、それは思い付かなかった。じゃあ海老とか買ってくるよ」

「私はこのテリヤキをもう少し食べたいな」


 マチは空になったバスケットを切なそうに見ている。きっとマチの口に一つ入る間に残りのほとんどが消えたんじゃないかな?


「バーベキュー台の上にフライパン置くよ」

「ラムも美味しいわよね……兄さん」

「ラムも買ってくるねパク。そんな目をしなくても買ってくるから心配しないで」

「中華料理は?」

「今回は無理。はい次」

「フランクリンが言った部位以外のも買ってきてくれ。肉は肉であり、全ての部位は感謝して食べるべきだからな」

「分った。流石は狩人の一族だね……フィンクスは?」

「酒。バーベキューするなら酒が必要だろ!」

「却下。コルトピは何か食べたいものはないのかい?」

「もう食べたいものは他の皆が言っちゃったよ」

「だよね。ヒソカは何かある?」

「あえて言うならキミを食べたいかな☆」

「星に帰ってくれ。――さて、じゃあ買い物に行ってくるよ」


 崖の下から「だからどーしてここでバーベキューしようとする!? ワケが分らん!!」というレオリオの声がして、ゴンたちが「レオリオとセンリツも上がってきなよ、一緒にバーベキューしよう」と誘った。なんだろうこのカオス。ちなみにオチビちゃん二人ことゴンとキルア以外の部外者からは、参加費を徴収します。大人なんだから自分の分の金くらい出さないとね。


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