その23



 あの後、明日大事な再会を控えているウボォーと戦いが待ってるクロロ君、それとオレを除いた団員の中で、誰がゴンたちを夜間の監視をするかという話になった。ノブナガは「相棒の晴れ舞台に寝ぼけ眼で行くわけにはいかねぇ」と主張したけど、ゴンを弟子にしたがってんのはお前だと皆から言われてノブナガに決定。シャルは途中で交代してあげるよと慰めてた。


「またヒソカのお守りを縫わなきゃいけないわけか……作って一日も経ってないお守りをまた作ることになるとは思いもしなかったよ」

「ごめんね☆ でもキミのお守りは本当に凄いね☆」


 クロロ君の分は皆が監視役を押し付け合っている間にチクチクと頑張り、今はヒソカの分を憎しみと苛つきを込めて縫っている最中だ。裏面には変態って縫ってやる。


「……なあ、このお守りはどうだった?『どう』っていうか、『どんな』って言うべき? 使用感覚っていうか、なんて言えば良いの?」


 オレの知らぬ間にそんな効果が付与されていたなんて知るわけがない。ちょうど良く近くにいるヒソカにその効果を聞いてみる。だってほら、オレの目でそれを見たわけじゃないし……。


「うーん、使用感覚と言われてもね☆『あ、この攻撃を受けたら死ぬな』って思う攻撃が、突然現れた光る壁に防がれてたってだけだし☆」


 オレンジ色の八角形の光の壁がね、と話すヒソカの言葉を総合してみる。八角形の波紋を持った光の壁が相手の攻撃から守ってくれる――ちょ、それってまさか、某母体回帰アニメの強力すぎる盾じゃないの。


「心の壁か」

「うん?」

「その壁はね、心の壁なんだ」


 基本的に他人という者を信頼してないっぽいヒソカの心の壁はさぞかし分厚いことだろうね。ある意味で絶対的で確実な守護だけどさ、まさか心の壁が現れるとは思わないよね。ビックリし過ぎてもう、なんて言えば良いのか分らないの。

 ヒソカは珍しく真剣な表情で「心の壁」とオレの言葉を反復してる。


「人間は誰もが心の中に壁を持ってる。その壁を壊してしまったら、人類はお互いに欠けた部分を補完し合う存在になれるだろう。だけどそれは昨日の繰り返しも永遠に続く今日も意味しない――ただの停滞が待ってるだけさ。……ん? よくよく考えてみたらゼーレが目指してたのとブリタニア皇帝が目指してたのって同じ事じゃないか?」


 話してるうちにエヴァとコードギアスが類似しすぎてることに気付いて、まさしく目から鱗だ。


「シンジ君も両親が残念だったし、ルルーシュも両親共に残念だし。皆が溶けあって一つになるのなんていうのも同じだよな。死んでも大丈夫的な展開も一緒……まさかの被り!?」


 ちなみに、ぐーぐるで「エヴァン○リオン コー○ギアス」で検索したら「どっちが名作と思いますか」的な質問がトップに載ってる。オレからすれば果てしなくどうでも良い。


「コーヤ。自分の考えに沈むのは、せめてボクがいない一人の時にしてくれないか☆」

「あ、ごめん」


 そういえば横にはヒソカがいたんだった。ヒソカはどこか顔色が悪く、手を握ったり開いたりしている。どうしたんだ? ヒソカのことだから寒くて震えてるなんてことはないだろうし。


「でも、考えに集中しながらも手を止めないのは凄いね☆」

「慣れてるからな。ところで顔色が悪いけど大丈夫か? 早く休んだ方が良いよ」


 いくらあまり好きじゃないヒソカが相手だとは言ったって、目の前で顔色を真っ青にしてる人を見て見ぬふりをするような冷たい性格はしてないつもりだ。風邪でも引いたのを耐えてるのか……明日お守りを受け取れば良いだろうに、辛いのを我慢して待ってるのかもしれない。早く受け取りたい理由でもあるんだろうか。


「もう少しで完成するからな」

「うん☆」


 言葉少ななヒソカの様子に、きっと寒気でもしてるんだろうと考える。今のうちに毛布でも持ってくれば良い――その間に完成するな。行って帰ってくるのも辛いのかもしれない。これが完成したら部屋に送ってやろう。

 早く済ませないといけないということで、「変態」の文字は「変人」に変更してさっさと刺繍を終える。あと五分で終わらせてやらないとね!


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