その04



 オレがクロロ君に渡していたクッキーと乾パンは始め、クロロ君、パク、ウボォー、フランクリン、シャルが食べていたらしい。マチやノブナガたちは途中参加だそうだけど。


「あんたがプリンの兄さんだったのか! あん時のプリン、マジで美味かったぜ!!」

「そう? そりゃ良かった」


 クロロが独占して女以外は全員一口ずつしか食えなかったけどな、と笑ったウボォーに、クロロ君が焦った声を上げる。クロロ君、君の心は狭いな……。いくらプリンが好きだからって言っても限度がある。独り占めいくない。


「なあ兄さん、プリン」

「オレはプリンじゃありません」

「兄さんがプリンならプリン神だな。プリンを作ってくれ」

「お兄ちゃんは眠いので今すぐ寝たいんだ」

「なに、一晩くらい徹夜しても問題ないだろう」


 オレの周りを跳ね回らん勢いのクロロを見てヒソカが堪えきれず噴き出す。そうだよな……二十六歳のすることじゃないもんな。


「クックッ……☆ キミのそんな姿は初めて見たよ☆ ところで、そろそろ彼をボクにも紹介してくれないかな☆」

「私も。その人、誰?」


 コルトピもうんうんと頷き、三対の興味津々の目がオレを見つめる。シズクとコルトピは良いけどヒソカの視線はねっとりしてて気色悪い。ヒソカに見られたら色んなものが奪われる気がする。特に何がと言えばお尻の貞操あたりが。盗賊が盗むのは貞操じゃなくてお宝であるべきだと思うの。


「オレが五歳の時から世話になっていた人だ。十七歳の時から会えなくなったが、ウボォーと偶然会ったらしくてな」

「ふうん☆」


 頭のてっぺんからつま先まで這う様な視線で観察されて怖気が走る。漫画で読んだ時もそうだが、ヒソカはかなり突き抜けてしまった人みたいだな。自分の快楽のためなら何でもできるタイプ。


「貴方がクロロに持たせてくれた乾パンとクッキーには、幼い頃は本当に助けられたわ。もちろん服もね」


 パクと名乗った彼女もクスリと目元を綻ばせて話した。マチは「あのお守りで私も裁縫に興味を持った」と嬉しそうにしている。お守りを見て裁縫をするようになったって聞いて嬉しいけど、中身出して見ちゃ駄目だろ普通――あ、そっか。クロロ君たちにはそういう常識ってのはないもんな。

 と、フェイタンがオレを胡散臭そうに見ているのが目に入った。


「でも団長、こいつ本当に本人か? 団長に見せてもらた写真から計算したら全く年齢が合わないよ」

「それはその通りだが、兄さんは永遠に十八歳の魔法使いだからな」


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ二週間前のオレ自重ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 顔を手で覆って、指の隙間からフェイタンを見る。フェイタンは口元をヒクヒクと引き釣らせている――そりゃそうだ。オレの顔もこれ以上なく引き釣っているからな!


「その魔法とやらはどんなものね」

「なんだ、疑っているのかフェイ。お前も覚えがあるだろう? あのお守りに魔法をかけたのは兄さんだ」


 え、オレお守りに何かしたっけ?


「超絶防御のアレか? アレにオーラは見えなかたからね……ワタシが知らなかただけで魔法なんてのも実在したのか、面白い奴。アレの作者なら見た目が変わらなかたと信じてやらんでもないよ」


 何なの、オレの黒歴史ほじくり返して楽しいの!? 魔法使いなんて冗談だよ、超絶防御なんて無理に決まってるだろ!?

 もう顔を上げられなくて目元を押さえて嘆いていたら、くいくいと服の裾を引っ張られた。相手は……フェイタンだ。


「魔法使い、後でワタシにもお守り作るね」

「あ、はい」


 呼び名が魔法使いってかなり痛々しいな。


「名前で呼んでもらえないか? オレの名前は幸也って言うんだ」

「分かた、コーヤね。コーヤ歓迎するよ。プリンも作れ」

「あ、うん」


 流れで頷いてしまったが、今すぐってことはないよな?


「私も魔法使いさんのプリン食べてみたい」

「幸也って呼んでねそこの女の子」

「あ、そっか。コーヤ、プリン食べたい。私はシズク」


 シズクが手を挙げて主張したのが可愛い。その横からシャルがキラキラした顔でオレの前に立った。


「ねーねーコーヤ、あんたが持ってるっていう魔法の道具、見せてよ。クロロがあんたのスマホっていう道具について教えてくれてさ、オレがケータイ作る時の参考にしたんだ」


 二週間前のオレ爆発しろ。何が魔法の道具だ、んなもんなわけがないだろ。――だけど持ってるからには出さないわけにはいけない。渋々取り出して渡せば、シャルは歓声を上げてスマホをいじりだした。


「オレはフィンクス。あんたがくれたクッキー、マジで助かった」

「そりゃ良かった。オレは幸也」


 フィンクスが差し出した右手を握り返し、スフィンクスというよりはファラオっぽいフィンクスの見た目に少し苦笑いする。


「そういえばボノはどうした?」

「もう寝てたぜ」


 横でクロロがウボォーに訊ねた。起こそうとしたら踊られそうになったから止めたのだそうだ。


「ところでさ、そのボノさんがオレは今すっごく羨ましいんだ。眠いので寝床を貸してください」


 クロロが「プリンは!?」と騒いだが、ウボォーが笑いながら自分のベッドを貸してくれた。歯磨きしてないけど眠すぎてもう我慢できん。おや……す、み。


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