五歳の妹が十五歳のクロロにメロメロだった



 本日のクロロ君は十五歳。もう毎度のことになった初めの入浴を終え、ドライヤーで髪を乾かしてやるのも十日目となった。そろそろ身長が追いつかれそうで怖いんだけど。百七十前半のオレとそう変わらないってことはもう百六十前半ってことだろ?


「お兄さんは髪を乾かすのが上手いな」

「麻那ちゃんの髪を乾かしてたら自然に、な。いつも思うんだが、クロロ君の髪はザンバラ過ぎやしないか? 切ってやろうか」


 枝毛はないようだが、束によって長さが適当でみっともない。麻那ちゃんの髪を練習台に、散髪には三年の経験があるぞ。


「ふむ……ならお願いして良いか? いつもナイフで切っているから、人に髪を整えてもらうのは初めてだ」

「さ、左様か……」


 ジャギー用のとパッツン用の二つを組み合わせて切っていく。前髪は邪魔にならない程度に顎あたりで揃え、後ろは折角頭の形が良いんだからと短めにさっぱりさせる。――どう見てもハンターハンターのクロロ・ルシルフル幼少期です有難うございました。し、仕方ないんだ、ちょっと気になったんだ、原作と同じ髪型にしたらどうなるかなって!


「これは良いな」


 十二歳くらいからは一人で風呂に入らせるようにしたんだが、散髪のために見ざるを得なかったクロロ君の上半身は引き締まり、腹筋なんて六つに割れている。どんな生活してたらたった十五歳で引き締まった筋肉の美青年になれるのか。是非とも教えて頂きたい。

 完成した髪型を見たクロロ君は嬉しそうに微笑んだ。お気に召したらしい。


「お兄さんは何でもできるんだな」

「ん? まあ家事なら大概のことはできるな。炊事洗濯掃除……一つ出来ないのはミシンだが、ミシンがなくとも裁縫はできるから問題ないしな」


 指折り数えてみたが、できない家事の方が少ないことに気付いた。


「裁縫……なら、お兄さんは服を作ることができるのか。オレは実際に裁縫という作業を見たことがない」


 何故か真面目な表情でそう訊ねてきたクロロ君に、ならしているところを見せてやるよと請け負った。何を縫おうか、ってか端切れとかの布はあったっけ? クロロ君を居間にやって麻那ちゃんと遊んでおくように言い、部屋にある裁縫セットを引き出した。長針に短針、ミシン針は使わんけど一応ある。おお、この布は麻那ちゃんの幼稚園用に巾着袋を作った余りか! 生地はしっかりしてるし青の無地で大人しい。これに『まな』と刺繍したらお袋に「あんたがどんな道に進みたいのか、私にはさっぱり分かんないわ」って言われたんだよな。

 階段を下りて居間へ入れば、美少年なクロロ君に麻那ちゃんの目がハートになっていた。なんだと!? そんなことお兄ちゃん許しませんよ!! クロロ君、君は表へ出たまえ。肉体的な言語でお話ししようじゃないか。

 クロロ君に親指でそうジェスチャーしながら笑顔で「表へ出ろ☆」って言ったら、麻那ちゃんに「まなのおともだちとっちゃだめ!」と噛みつく勢いで怒られた。これが娘を嫁にやる心境なのか……! 目から血が流れそうだ憎いクロロ君が憎い!

 血涙を流しながら、ミニ巾着を縫う。端切れの残りの関係でこの大きさの物しか作れなかったんだが、これでは巾着と言うよりお守りだ。だが気にしない。

 クロロ君が興味津々にオレの手元を見ているせいで麻那ちゃんの機嫌はジェットコースターのごとく急降下だ。羨ましい麻那ちゃんに好かれているクロロ君が羨ましい。

 出来たミニ巾着は表にクロロという刺繍を入れたなかなか上出来なもので、途中で憎しみのあまりDEATHと刺繍しそうになったのを泣く泣く諦めたことを除けば大満足のものになった。


「凄い。布がこんな風に変わって行くなんて」


 興味深々といった顔でオレの作ったミニ巾着を眺めつ透かしつするクロロ君にそれをやると言えば、ぱっとオレを見て「良いのか!?」と嬉しそうに声を上げた。


「中に何か入れるには小さすぎるけどな」


 もう巾着じゃなくてお守りってことにするか? お守りなら中に何かの紙入ってるよな……適当に『超絶守護』とか書いておけば良いだろ。


「この字、読める?」

「いや、なんて書いてあるんだ?」


 大丈夫そうだ。


「これはお守りって言ってな、持っている人を一度限り――いや、一年限りだっけ? まあ良いや一度限りってことにしとけ――守ってくれると言う護符みたいなもんだ。懐中に忍ばせとけ」


 そう言ってお守りもどきをクロロ君に押し付ければ、クロロ君は感動したと目を潤ませながら何度もオレに礼を言った。そんなに感動した理由が分らない。

 ちなみに、後から調べたら効力は一年限りだった。あえて訂正することもないさ、細かいことは気にしない!!


9/10
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