肉団子のスープと若鳥の甘酢かけはクロロ君には好評だった。クロロ君がオレを褒める度に不機嫌になって行く麻耶ちゃん……お兄ちゃん何かしたかな?

 食後のまったりした時間、クロロ君が電話台の上にある家族写真を見つめて悲しそうにしていた。いや、クロロ君が実際にどう思ってたのかは知らないけど、なんとなく「悲しんでるんじゃないかな」という雰囲気がしたと言うか。これはオレが一肌脱いでやるべきだろう。うちのカラリオ君はスマホからの転送プリントアウトも出来る凄い奴だからな。

 タイマー式写真撮影アプリを探してダウンロードし、スマホをテレビの上に置いて記念撮影。麻耶ちゃんは何をするか分っているがクロロ君は何が始まるのかと困惑していた。

 「ビビデバビデブー!」と叫びながらボタンを押せば始まるプリントアウト。クロロ君は何が起こるのかと目を輝かせ、麻耶ちゃんは親父が普段似たようなことをしているせいか興味など全くない様子だ。そして出てきたカラー写真に歓声を上げたのは、もちろんクロロ君だ。麻耶ちゃんは顔に「別にどうでも良い」と書いている。お兄ちゃんは悲しい。

 町内会の張り紙のためにお袋が買ったラミネート機械で写真をラミネートし、クロロ君にプレゼントしてあげた。クロロ君は大喜びで跳ね回っていると言うのに麻耶ちゃんの機嫌は急降下だ。お兄ちゃん、麻耶ちゃんに何か悪いことしたっけ?


「有難うございます、お兄さん!」

「いーよいーよ。こうしといたら濡れてもヘロヘロにならないし、汚れも付きにくいから安心だろ?」


 写真を胸に抱き締めてお礼を言うクロロ君に「大事にしてくれればそれが一番だよ」と答えれば、麻耶ちゃんが向けてくれないキラキラした尊敬の視線でオレを見るクロロ君。――麻耶ちゃんがオレを睨む理由が分ってきた気がする。つまり、自分が連れてきたはずのお友達がオレに盗られると思えたんだろう。なんだよ可愛いな麻耶ちゃんは。そんなことするわけないだろ? でもこの年じゃ分んないか、なんなのこの天使マジ天使。

 七歳のクロロ君には麻耶ちゃんとの時間は「一緒に遊ぶ時間」ではなく「子供を監督してやる時間」のようだ。クロロ君に遊んでもらってるとは思ってもいないらしい麻耶ちゃんはニコニコとクロロ君を独占している。

 三時までまだ一時間半あるから、買い物に行くには十分足りる。というわけで麻耶ちゃんに「ちょっとお兄ちゃんお外に行ってくるけど、クロロ君と仲良く遊んでてね」と言って家を出た。クロロ君は何かを訴えるような目を向けてきたけど何なの? 後で聞くから一時間半待って。

 今日の夕飯用の魚と明日の天津飯に入れたいピーマン、その他色々と買って家に帰れば二時半過ぎ。ビニールをガサガサ言わせながら台所へ直行して冷凍物を詰め、お子様二人用に買ってきたインスタントココアとオレ用の正統ココアを作るため牛乳をレンジにかける。


「流石は森永……お徳用の増量パックは子供のいる家庭には有難い」


 ウチではチョコレートは明治、ココアは森永。――と言ってもオレの場合ココアは純ココア派だ。七年くらい前にお中元の解体市でお袋がヴァンホーテンのココアパウダーを買ってきてから、「インスタントなど認めぬ! オレは断固として純ココアパウダー派!!」となった。ネリネリするのが特に好き。


「麻耶ちゃん、クロロ君、ココアとプリンだよ」


 声をかければ駆けてきたのはクロロ君だ。プリンと叫びながら走る子供なんて初めて見た……。


「そう、プリンだ。それもかのパーティサイズのバケツプリン!」

「凄い、凄い! やっぱりお兄さんの作ってくれるプリンって大きい!」


 プリンを見て大興奮のクロロ君に対し、二日前に見たばかりの麻耶ちゃんはココアの方が嬉しいらしい。さっさと一人で椅子に座るやニコニコとココアを飲み始めた。


「ほらスプーン」

「有難うお兄さん!」

「良いってことよ」


 一口食べるごとに身悶えして喜ぶクロロ君を微笑ましく思いながら、記念としてスマホでその姿を録画しておいた。


「その板って何なんですか?」

「ん? これはな、遠くの人と話をしたり目の前の光景を永遠に残したり映像って分るか?――映像を永遠に残したりしてくれる魔法の道具なのだ!」

「す、凄い! そんなものがあるなんて知らなかった!!  お兄さんって魔法使いなの!?」

「ふふふ……その通り! オレは魔法使いなのだ!!」


 クロロ君の反応があまりに可愛いから、ノリノリでそんなことを話した。実は空を飛べるのだとか(もちろん飛行機で)、遠いところへすぐに行って帰って来られるとか(バイクで)、クロロ君に服や乾パンを持たせて帰らせるまで、そりゃもう悪乗りした。

 麻耶ちゃんに「まなのおともだち、とっちゃ駄目!」と後から怒られて凄く反省した。


6/10
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