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オレの弟は世界で一番恰好良い。切れ長の双眸通った鼻筋、薄すぎない口元――傍目にはオレと血が繋がってるとは全く思えないだろうことは間違いない。
ちょっとヤンチャが過ぎて後始末をオレに押し付けたりするが……早逝した両親に代わり育てたせいかオレはヒソカに甘い自覚がある。だからヒソカがなかなか親離れできないのか? オレのせいなのか? だがヒソカはオレにとってまだ子供でしかない、呼ばれればついつい応えてしまう。子離れするべきだろうな、オレが。――無理だな。
「母親が同じなら……父親が違うとか?」
交渉を終え、ゆっくり紅茶でも飲もうとティーセットを取り出したオレに、パクノダがオレとヒソカが兄弟だと未だ信じられないといった顔で訊いてきた。
「両親共に同じだが?」
母さんが浮気したんじゃない限り同じ両親から生まれてきたはずだ。まあ……似てないからな、疑うのも分からんではないんだ。オレの顔は前世のを引きずってて父さんにも母さんにも似てないからな、父さん似のヒソカと似てるはずがないんだ。
「兄さん、交渉は終わったんだろ? ならボクを構ってよ☆」
「兄さんがヒソカなんかを構うわけないじゃない、消えたら?」
クラーレが吐き捨てるように毒を吐く。どうしてこんな子に育ったのかさっぱり分からない。
「クラーレ」
「なあに兄さん?」
「あー……あまり物騒なことは言わないこと。分かったか?」
「分かったわ兄さん」
オレを滅多にないものを見るような目で旅団の皆が見る。気持ちが分からんでもない、ヒソカもクラーレも発散するオーラがちとまがまがしいからな。見るからによわっちいオレの言うことを聞くようには思えん。猛獣遣いみたく思われてんじゃないだろうか。
「一杯どうだ?」
団長に首を傾げて訊ねれば、一瞬の空白のあと頷いた。
「頂こう」
オレの手土産だったゾルディック饅頭がおやつになるまでそう時間はかからなかった。
兄さんはクロロたちに本名をばらし、シズカと呼べと笑った。駄目だよ兄さん、幻影旅団と仲良くなんてしたら面倒事押し付けられて苦労するよ。兄さんに面倒を見てもらって良いのはボクだけだよ☆
「クロロ、今回はボクが連れてきたけど、兄さんにちょっかい出さないでね☆」
ちょっかいなんて出されたら――もし兄さんが許してもボクが許せない☆
「確約は出来ない」
「……☆」
やっぱりここは兄さんには危険だ☆ 兄さんに会いたいのと自慢するつもりで呼ぶのを了承したけど、もう近付けるべきじゃないね☆
「兄さん、帰ろっか☆」
「ん? まだ時間には余裕があるだろう?」
「兄弟二人水入らずになりたいんだ☆」
「こらこらヒソカ、クラーレを忘れちゃ駄目だろ」
「ヒソカ死ね死ね死ね死ね死ね死ねヒソカ死ね」
妹がブツブツと文句を言うのをいなし、兄さんの手を取る。
「ああ、シズカ!」
「ん、何?」
「また頼む」
――今ここでクロロを壊せたら良いのに☆
「んー、ヒソカを通してならな」
兄さんは本当に、ボクを喜ばせるのが上手い☆
ボクは兄さんに抱きついた。クラーレが悪鬼のような形相で睨んでくるけど気にしない☆ だって兄さんはボクの兄さんだからね☆
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