Side: XANXUS



 マチが殺され、はや五年が過ぎた。こちらの世界に干渉するには少し力が足りねーらしく、霧部隊隊長の六道とコンタクトを取るくらいしかできねぇらしい。が、向こうでも元気にやっているという。新しくできた仲間と幻影旅団とかいうのを立ち上げて盗賊をしていると聞いたときには笑ったな。こちらと比べて殺伐とした世界らしいが、マチからすりゃ向こうの方が平和だという。そりゃそうだろうな、こっちは保護者が敵だったんだ。


「おい六道、マチから返事は」

「まだですよ! 毎晩夢で会える訳じゃないんですからちょっと待ってくださいよ!!」

「シシ、役に立たねーのォ」

「役に立てないことを深く反省して隊長の立場を僕に返しなよ」


 隊長ではなくなったとは言え、マーモンは幹部でもなくなったわけじゃねぇ。幹部のみの部屋にはほぼ毎日出没しては六道をネチネチと刺してやがる。任務に支障がなけりゃどうでも良い。


「だいたい、僕の寝ている時間とマチの寝ている時間が合わなければ会えませんし、マチも向こうで世界を飛び回っていますから睡眠時間が一定ではありませんし……」


 六道の言葉も分からなくはねぇんだが、オレらからすりゃ顔突き合わせて会える六道が羨ましい。ついきつく当たるのもしゃぁねぇだろ。


「単なる嫉妬だ、そう腐るんじゃねぇよ」

「これのどこが単なる嫉妬だと!? 殺す気満々じゃないですか!」

「死んでねーだろ」


 マーモンが氷の矢を放って六道を攻撃し、六道は燃えさかる鞭でそれを叩き落とす。キメラみてーなのをマーモンが出した思えば、六道は蛇の髪を振り乱した女の首がはめ込まれた盾を構えてキメラを石化する。どこの神話の戦いだ……。

 オレや幹部連中がこうも六道に絡むのには理由がある。六道を通じてビデオレターもどきをしてるからだ。ビデオはやりとりできねぇから映像と音声の情報を受け渡ししているだけだが、六道さえいれば何度でも再生できんだからビデオレターとそう変わらねー。それに六道が幻想世界で会ったときはそれを動画に保存しているからな、二倍楽しめるわけだ。返事と普段の生活に関する話とをな。

 数日前に見たばかりのマチの笑顔を思い出す。向こうにはオレに似たクロロとかいう奴がいて、そいつはヴァリアーのように一癖二癖ある奴等をまとめ上げるリーダーシップのある男だという。他にもパクノダやウボォーギン、フランクリン、ノブナガと名前が出たが、一番強いのはクロロで、中心にいるのもクロロだと。

 だが、話を聞くうちにそれは違うと分ってきた。マチは分ってねぇんだろうが、そいつらは全員マチを守ろうと心を砕いているようだ。トカゲの尻尾切りのように、簡単に足を捨てられる幻影旅団――そりゃ嘘だ。クロロが頭であるのは腹であるマチを守るために違いねぇ。頭胸部と腹部は細い腹柄でしか繋がっていないが、蜘蛛にとって腹部は失うことのできない部分だ。つまり頭胸部と足は全て腹のために存在している。隠された中心か――誰よりも大空であろうとあり続けたマチには相応しいかもしれねぇな。

 身代わりとして全ての害を引っ被ってきたマチだ。向こうでは報われて欲しい。大事にされて欲しい。オレらが出来なかった分だけ。


「マチ――」


 お前の近くで笑える、そっちの仲間が羨ましい。死ねばそっちへ行けるってんなら迷わず死ぬが、確信がない限り無理だ。死んじまったら二度と会えねぇんだからな。

 だが、きっとまたお前に会って見せる。楽しみに待ってやがれ。


――12/03.2011


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