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 世界の八割の国の賛成を得て設立されたのはハンター協会。その運営はある部分シビアで、ほとんどの公共サービスを無料で受けられ、多少の殺人を認められるというおかしな身分証明書――こんな権利を与えることになったのには理由がある。

 先ず、ハンター試験を通った人間はある一定以上の力を持っている。もしその人が武術バカとか修行バカとかで甲斐性なんて全くなかったとする。その人を待っているのは犯罪に走る道か餓死する道か、怪しい森でサバイバルする道。強い人間に犯罪に走られては困るし、ハンター証を持った人間が犯罪をしたとなればハンター協会の信頼がなくなる。というわけで合格者は公共サービスでその命を保証されなければならない。それと、ハンター証を売れば三回は一生遊んで暮らせるのはカードをハンター協会が回収するから。カードは特殊な加工が施されていて、公共施設に設置予定のカードリーダーに通すと本物か偽物か判断できるようになっている。一枚作るのにもお金がかかるのだ。つまり、ハンター合格者が試験を通った結果得た権利(公共サービス無料)を手放すと、こっちとしてはカードが返ってくるうえ公共サービスを受ける際にハンター協会が払わなくちゃいけないお金がその分浮くというわけ。それがかなり高額だから、リターンとして半額を渡すことになったのだ。

 次にある程度の殺人の許可だけど、これはハンター証の売却を許可したことと治安維持のため。売却すれば人生三回分の金が手に入るカードを持っているなんて、カモだから襲ってって言ってるようなもの。一対一では負けるかもしれないけど五対一なら、十対一なら? 自分の身を守るために殺人なんて躊躇ってられない。それで殺人罪だなんて言ってたらただ殺されるのを待てと言っているようなものだしね。それとこれは表にできない理由だけど、あんまり性格に難のある合格者が出た時にはハンター協会側が彼を殺すため。裏ハンター試験と原作で言っていたアレだけど、協会が認めた合格者には師範が送られ、認めなかった合格者には殺し屋を差し向けるかわざとその合格者の情報をリークする。師範についた合格者は守られるけど師範のいない合格者はハンター証を奪うため殺されるってわけ。


「かなりきつい規則になりましたね」

「まあ、これくらいしないと悪用されたりしますから」


 教団に話を持ち込んできた人――デキルさんが書面にした規則に顔をしかめながら言ったのに対してアルビレオさんがため息をついた。デキルさんはどうも潔癖なところがあるのか暗殺に嫌悪感を持っているみたいだけど、呼び声に答えて色々な場所へ行って見てきた私からすればその考えは生ぬるい。現代日本の法律をここで採用したとしても治安は絶対に良くならないし、刑務所がすぐにパンクして無駄なお金がかかるだけ。あの法律で日本がやっていけてるのは日本の治安が元から良いからなんだしね。


「仕方……ないのでしょうか? 人というものは生来良いことを求めるように生まれているはずです」

「それならここまで治安が乱れてませんよ、デキルさん」

「――ところで、こんなきつい試験を受けにくる人間はいるんでしょうか?」


 痛いところを突かれたせいかデキルさんは聞こえなかった振りをしたようだ。書類をバサバサと振りながら雰囲気を変えようと躍起だ。


「合格した際のリターンが大きいですからね。死ぬかもしれないとこちらが説明したところで、刹那的な生き方しかしてきていないのですから気にしやしないでしょう」


 アルビレオさんはボスのいないショッカーたちを鼻で笑うと、つい一週間前に各地に交付したのと同じポスターの私の写真を見下ろしてニヤっとした。デキルさんが嫌悪感に満ちた目で見ているのに気づかないんだろうか?

 ポスターには各地の公共施設に行けば申し込みができること、旅費がない人でも(ほとんどの人がそうだけど)迎えが来ること、合格した際に得られる利益について書かれているんだけど、八割は笑顔の私が占めていた。いつの間に撮ったんだろうか、というか微妙に輪郭線がぼやけてるのは拡大したからだよねコレ。隠し撮りだよねやっぱり。


「まあ、百人くれば良いですかね? 初回ですし」


 ポスターを丸めながら言ったアルビレオさんから無言でそれを取り上げて踏みつぶしたら這い蹲って嘆いたから、私とデキルさんはゴミを見るような目を向けた。


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