懐かしいね、こんな部屋もそういえば作ったよね! と言いながらハリー・ポッターに引きずられて隠し部屋に連れ込まれた。今代の校長が何を隠しているのかその無駄で邪魔な好奇心を擽られたこの馬鹿は、顔男とよりにもよって私を連れて入り込んだのだ。一人で行きやがれこのクソが。


「来たな、ハリー・ポッター……」

「おや、貴方はクィレル先生!」

「ふっ、そう。賢者の石を狙っていたのはこの私だ」

「賢者の石だって? へえ、誰だかが成功させてたんですね!」

「それというのもあのお方のためだ」

「話が噛み合ってない気がするのだが」

「双方とも人の話を聞かないということだ」


 顔男が呟くのに答えて、私はターバン男を見た。それぞれ相手の言うことをさっぱり聞くことなく話が進んでいく。前々から臭いと思っていたのだ、あの男は。実際にニンニク臭いし。刺激臭じみたニンニクの匂いに混ざって腐敗臭もするから、裏に何かあるとは気付いていたが――まさかいらんものをくっつけていたとは。


「このありさまを見ろ」

「うわあ醜いね!」

「こら、人の痛いところを突くなと前々から言っているだろう」

「ただの影と霞に過ぎない……誰かの体を借りて初めて形になることができる……」


 クィレルの後頭部の顔はなんかノリノリで自分の身の上を披露し始めた。


「この数週間はユニコーンの血が俺様を強くしてくれた……」

「バフッ!」

「――バフ?」


 自称・偉大な魔法使いヴォルデモート卿の一人称に、噴いた。一応手で押さえたんだけどな、片手では力不足だったようだ。


「その顔で『俺様』か、そうか。――で、何のギャグだ? 私を笑わせたいのかそうなのか! なら笑おうふははははははははは! いやはや、毎日こいつの面倒な子守りに追われて心の余裕をなくしていたようだよ私は。そうさ、そうだった。私は基本的に快楽主義者なのだ人を這い蹲らせることが三度の飯以上に好きなのだ! だがそれ以上に好きなことがある、分るか?」

「ロニア……」

「黙ってろ顔野郎。貴様はモブだ、モブはモブらしく端の方で野次馬ってろ」

「ロ、ロニア?」

「消え失せろ低能。手前はクソだ。金魚の尻にでもひっついてろ」


 顔男は部屋の端で膝を抱え、阿呆はさめざめと泣きだした邪魔だ。


「み、Miss.ロニア?」


 クィレルが訊ねるように口を開いた。何だ邪魔ばかりしやがってカッ消すぞ。


「私はな、自分の能力を勘違いしている大馬鹿者の心を叩き折るのが一番大好きなのだ!」


 俺様だって? 馬鹿じゃないの? 頭悪いの? 頭をノックして「詰まってますか?」とか聞いてやろうか。まだ西瓜の方が密度高いんじゃないか?


「自分が最強だとか思い込んでいるのだろう、ははは! 馬鹿が! 上には上がいるのだそんなことも分らんのかバーカバーカ!! 知性を母親の腹の中に忘れてきたのだろう、もう一度ママのお腹に戻ったらどうだ今度こそ一般人並みの知性をもらえれば僥倖僥倖!」


 ぬるま湯の中で育った貴様のような人間と私を同列に置くな、命がけで自分なりの魔法を完成させた私に勝てると思うなよ!






 ダンブルドアが現れた時目にしたものは、部屋の隅で膝を抱えて震えるドラコと泣きながら助けを求めるハリー、ヴォルデモートの抜けたクィレル――そして、煙のヴォルデモートを掴み振り回すロニアの姿だった。


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