日本に来て早数日。ザンザスたちはそろそろ綱吉率いるお友達グループと顔合わせをした頃だろうか? あまり興味がないというか何というか……私は綱吉が十代目になるのに反対なのではなく家光がのうのうと生きていることが気に入らないだけなのだ。強いていうならザンザスが勝ってくれれば良いなと思っている。

 無線がマイクを擦った時のような音を響かせ、ザンザスかルッスか……メンバーからの連絡が来たことを示した。イヤホンのダイヤルを調節しマイクを口元にやる。アホイアホイ?


「う゛ぉぉぉい、遊ぶなぁ! ボスが呼んでるから並盛に来やがれぇ!!」


 まさかスクアーロからとは思わず、キィンと耳に響いた大声に目をぱちくりさせる。音量は弱になおさねば。


「え、なんで?」

「こっちの十代目候補を捕捉したぁ! お前ならすぐ来られるだろうとボスの命令だぁ!」

「分かった。今すぐ向かうよ」


 ヴァリアーの幹部専用コートを羽織り、フードを深く被って顔を隠す。今はまだ顔を見られるわけにはいかない――事実は一番その相手にとって堪える時にバラすのが良い。そうだね……たとえば、かつての私とそう変わらない年齢のランボが傷ついた時とか? それとも雲戦の直後も良いかもしれない。今まで信じてきた父親が、優しそうに見える九代目がしたことを知るには。

 夢幻散歩では骸をして鬼才と言わしめた私は大空、霧、雲の順に属性が強い。すべてを受け入れはするが個人主義かつ実態の掴み所がないといったところか。無いようである、あるようでない――媒介はマーモンの飼いカエルのファンタズマ。土手の上に受肉し、数名欠けた守護者と門外顧問ペアを見下ろす。


「十代目候補沢田綱吉……」

「またなんか出たー!?」

「失礼な奴、人を指差しちゃいけませんって君のママンは教えてくれなかったの?」


 マーモンの隣に浮いていようとしたらザンザスに掴まれて宙ぶらりんになる。ザンザスは嘲るように眼下の家光を見やり、私を振った。


「家光、テメェの罪の証だ。よく目に焼き付けろ」

「――ザンザスッ! その子をどんな甘言で騙したかは知らんが、貴様の狙い通りその子は候補から外れた。もうその子を振り回すのは止めろ!」


 何を訳の分からないことを――もしかして私が知らないとでも思ってるんだろうか? だとしたらお目出度い頭をしていることだ。


「ハッ! 自分のしたことは棚上げで良く言うぜ。テメェのしでかしたことの尻拭いをテメェの息子がするんだ、親の因果が子に報いっつぅのはこういうのを言うんだろうな」


 いつになく饒舌なザンザスにリボーンの眉が寄せられる。リボーンは知らないんだろう、九代目と門外顧問のしたことを。


「おい家光、これはどういうことだ?」

「そうだよ父さん! 俺が父さんの尻拭いって何!?」

「ダメツナは黙ってろ」


 リボーンの飛び蹴りを喰い悲鳴を上げた綱吉には目もくれず、ザンザスは家光を威圧的に見下す。


「……綱吉には関係ないだろう」

「ハッ! どの口がそれを言う。まあ、全ては争奪戦で白黒付く。首洗って待ってろ」


 ヴァリアーの姿が消えたとたん一体なんだったの!? と大声で騒ぎ始めた綱吉の声を聞きながら、私は幻術を解き意識を本体に戻した。

 全てはそう、リング争奪戦で決まるのだ――


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