目覚めはまた唐突だった。あまり仲が良いとは言い難い――でもゆりかごを起こした、九代目に裏切られた仲間という意識はあるヴァリアーメンバーが勢揃いしていて、壮観な眺めだなと感心する。


「おはよう、マチちゃん! アタシが誰だか分かるかしら。実はあれから外では八年も経ってるのよ? アタシもこの八年の間にオトナの魅力がアップしたから分からないかもしれないわねぇ」


 六歳児の姿のままの私に視線を合わせるためか、ルッスーリアは膝を突いて私の両肩に手を置いた。


「知ってるよ、ルッスーリア。意識だけはあったからね……正確な年数は知らなかったけど何年も過ぎていることは分かってた」


 横に座っていたザンザスが目を見開いて私を見つめた。他のメンバーも瞠目して私を見下ろす。ついでにザンザスには椅子が用意されていたけど私にはなかった。差別とは思わないけど寂しいものがある。


「意識があったって、ホント? だってそれってつまり、八年間ずっと一人ぼっちだったってことじゃない。そんな――ボスももしかして意識があったの!? それならアタシ、毎日でも通ったわよ!」

「いや、オレは気が付けば八年が過ぎていただけだ。コイツみてぇに……マチみてぇに意識があったわけじゃねえ」


 なんと意識が残っていたのは私だけだったとは。身代わりのくせして傲慢だ、とかそんな嫌がらせだろうか? かなり性根が悪いな、それだと。


「シシ、九代目マジ穏健派とか言えねーし」

「哀れな……」

「八年あればどれだけ儲けられると思ってるんだい? これほど非道なことはないね」


 スクアーロだけは言葉が見つからないのか口をへの字にして私を見下ろしていたけど、誰にも共通することは『私を憐れんでいる』ということだ。たった六歳の子供が、今まで生きてきたよりも長い期間孤独にさせられたのだ。憐れむなという方が難しいけど、でもそれは嫌だ。


「同情で仲間意識を持たれても嬉しくない。私が目指すのはただ九代目の失墜と門外顧問の処刑だけさね。同じ目標を持つ同僚としての仲間意識なら大歓迎するよ」


 目の前に膝を突くルッスーリア、ザンザス、スクアーロ、レヴィ、ベル、マーモンを順に見ていく。幻想散歩とかでこの八年自由気ままに過ごしてきたけど、恨みが薄れたなんてことはない。トモコを騙した罪――親戚として支援するという手がなかったとは言わせない。ツナの盾にするという説明をしなかったのは何故? 私たちは母子共にボンゴレに騙されたのだ。最低だ。人間として最低だと思う。


「ハッ! オレとテメーは似た者同士みてぇだな……同情なんてクソ喰らえ。そんなもんで誤魔化されて今のオレがいる。マチ、オレに従え。テメーの目的とオレの目的が合致する限り、オレはテメーの復讐に全面的に協力してやる」

「ザンザス」

「オレは十代目になる男、ザンザスだ! あのクソジジイの遺産なんざいらねぇから丁度良い――オレのモンになる前に一度ぶっ壊す! ついてきやがれ、マチ」


 差しのべられた手は、記憶の中のどの手よりも温かく感じられた。


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