この世が思っていたよりも残酷な世界だと分かって、私はなんだか吹っ切れてしまった。物心つかない子供を、わが子の盾として育てるだなんて、それも、親族の子供を平気で使うだなんて。

 トモコは以前言ったことがある――トモコと家光は従兄妹だと。従妹の娘を平気で身代わりにできてしまう冷酷さには笑うしかない。無力な笑いと言われる、どうしようもない物事にぶつかってしまった時につい浮かべてしまう笑み。切ない、ああ。

 ゆりかごは原作開始八年前のことだから、来年。いっそのことザンザスと一緒にクーデターを起こすのも良いかもしれない。何も知らない子供だと思って油断して、私に手を噛まれてしまえ。そして、この真実が明るみに出た時に、ボンゴレの名前は地に墜ちるのだ。


「――あ」


 超直感は目覚めていたし、この体にボンゴレの血が流れていることは私がトモコの娘である時点ではっきりしている。傍流だからというだけの理由ですべてを奪われるなんてまっぴらごめん、私は私の道を歩いて見せる。――そう心に決めて拳を握りしめた瞬間、私の手に橙色の炎が燃え上がった。これは死ぬ気の炎?


「それはもしや……ああ、素晴らしい! 流石マチ様です。その年齢で死ぬ気の炎に目覚められるだなんて!」


 私の様子を覗っていたらしいトモコが歓声を上げた。私もびっくりだ……まさか目覚めるだなんて思いもしなかった。まあそんなことはどうでも良いよ、私が先ずすべきことは復讐だからね。


「九代目に報告しなくては……素晴らしい。マチ様は私の誇りです」


 私の頭を撫でながら隠し切れない微笑みを振りまくトモコの姿に切なくなる。トモコはどんな思いでわが子を様付けし、他人の子供扱いしているんだろうかと。


「うん。私、トモコのために頑張るよ」

「まあ! ありがとうございます、ですがマチ様はボンゴレ十代目筆頭候補でいらっしゃいます。ですから、マチ様はみんなのために頑張ってくださいね」

「みんなの中で一番トモコが大好きだもん」

「そう言っていただけて、私はとても嬉しいですよ」


 私の実母であるトモコ。ねえトモコ、貴方をお母さんと呼べる日は来るのかな。クーデターが成功すれば……もしかしたら。そう期待したいんだよ。







「殺してやる!! クソジジイも、カス共も、全員……血祭りにしてやる!」

「ザンザス……」

「呪われてあれ、ボンゴレ九代目、門外顧問! あんたらの自分勝手が私を生み出したことをよくよく後悔するが良いさ!」

「マチ……」


 ゆりかごは失敗、私とザンザスは氷の彫像となった――私のみ、意識を保ったまま。


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