ドラコ、と叫びながらシルバーブロンドの少年を追いかける少年を見て、私は、関わり合いにならないように本に顔を埋めた。


「はっはっは、恥ずかしがり屋だなドラコは。まあ元から知ってたけど。そんなドラコも好きだよ!」

「煩い近寄るな汚らわしい。馬鹿が移る、気色悪い!」

「朱に交わればなんとやらと言うじゃないか!」

「誰が貴様のようになるか!! 近づくなと言うのが分らんのか!」


 私は無視をする。というか、この天下の公地で怪しげな男同志の恋愛劇場を始めるな畜生共めが。ハリー・ポッター側の一方的なアピールのようだが、私は二人とも気に入らん。心底憎い。何故なら、二人が目を引く美形だから。吐き気がする。美形を持て囃す者共の気持ちがさっぱり分らん。木の幹に背中を預けて本のページをめくる。昔にはなかった新しい魔法に私は心躍るのだ。私自身魔法を生み出す者だったが、この千年の間に何人もの天才が素晴らしい軌跡を残してくれたようで私の知らない魔法がたくさんあった。その代わりなのか、この千年の間に消えてしまった魔法も数多くあるようだが。


「あれから千年過ぎた……世界は変わった。だというのに」


 あいつはさっぱり変わっていない。――ゴドリック・グリフィンドールはあの能天気なノリのまま転生し、今もまた能天気を世間に晒している。あいつのせいで私はサラを追い出してしまったと言うのに、反省の色はさっぱりない。馬鹿が。


「待ってよドラコ――」


 ハリー・ポッターはかのドラコ・アルフォイを追いかけ、よりにもよって私にぶつかった。


「あ、ゴメン! えーっと君はレイブンクローの……」

「顔の良い奴は概して性格に難があるんだ近寄るなイケメン。貴様ごときに名乗る名などないわ消えろ美形族。俗世間から持て囃されても私は決して美形の存在を許しはしない! 滅亡しろ美形! 死にさらせ美形!――あ」


 本を振りかぶりハリー・ポッターの顔面に叩きつけて、倒れ伏したそ奴を蹴り付けながら罵る。顔の良い男は全て死にさらせば良い。そして、言ってから気付いた。


「ロウェナ……?」

「誰のことを言っているやら、私はロウェナなどという名前ではない死ね顔野郎。ではアデュー!」

「ロウェナだろう、君はロウェナだろう間違いなく!」

「知らんと言っている消滅しろ!」


 追いすがってくるハリー・ポッターを殴り飛ばし、私はその場から逃走した。いや、逃走などではない。これは君子の英知ある凱旋というのだ。あいつに巻き込まれたら私の平穏な学生生活はおじゃんだ。絶対――絶対に巻き込まれてなるものか!


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