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視線の種類はいくつもある。たとえば同じ『驚愕』でも『羨望』が混じっていたりすれば別だし、『恐怖』が混じっていればまた異なるモノになる。私はその視線を選別してどれがトリッパー共なのかを弾きだす。ギタラクルのような男にビアンキみたいな美女がいたらどう思うと思う?――普通なら嫉妬し、羨望し、嘆く。あんなのに彼女がいるってのに何で自分にはいないんだ、とか考えるだろうね。だけどトリッパーは違う。驚愕し、混乱し、疑う。ハンター世界に何故ビアンキがいるのか、『リボーン!』を知らなくとも原作にはいないはずの存在に首を傾げるはず。だから――殺さなきゃいけない対象はもう分った。
「ふふふ……ママン楽しそうね」
ブショワ――、と紫色の煙を上げる手作りの寿司を皿にのせ、ビアンキが笑う。その通り、私はとっても楽しいよ。ヒソカだけにあげちゃうのはもったいない気もするしくらいだしね。今回はそうだなぁ、私とヒソカとビアンキで殺しちゃおうか。三次試験ならいくら殺してもお咎めなしだし。
「そう、なら久しぶりに私も楽しもうかしら」
ビアンキが皿をギタラクルに手渡した。ギタラクルってかイルミはそれを持ち上げて光に透かしたり匂いを嗅いだりして毒性を確かめてるみたいだ。そういえば前、ココの某毒は効いてたみたいだけど、ビアンキの毒も効くんだろうか? ビアンキ、イルミに食べるように言ってみてよ。
「ギタラクル、ママンの命令よ。そのお寿司を食べなさい」
「……これを?」
「もちろん」
皿を上下して示したイルミにビアンキが鷹揚に頷く。
「分った。知らない毒だったら勉強になるし」
「勤勉なのね、見た目と違って」
「これは本当の姿じゃないよ」
「あら、そうなの」
あれれ? ビアンキとイルミの空気がなんだか柔らかいんだけど……お似合い、かも。私のビアンキはリボーンと付き合ってないし。いつか特質系の念能力者を捕まえて皆の体を作れたら良いなとは思ってるから恋愛自由だし。ただそのちょうど良い特質系を捕まえるのに手間取ってるんだけどね。まあ、青い果実たちの中でこれはって子が二人ほどいるからどっちかを使えばいけるとは思う。
「ほら、食べて」
「うん」
ビアンキに言われてイルミはそれを手に取りパクンと食べた。何度か咀嚼し、そして泡を吹きながら倒れる。
「あら、おかしいわね。毒に耐性があるんじゃなかったの?」
もしかすると――ハンター世界の毒とリボーン世界・トリコ世界の毒は本質的なところで異なっているのかもしれない。イルミはエリートだからかなりの数の毒に慣らしているはずで、毒を食べても平気なのがゾルディックなんだから。あは、面白そうだねぇ。
「試験終了―!」
向こうでメンチさんがもう食べられないからと合格者ナシを言い渡し、ビアンキが教えた寿司は誰の口にも入らないままそこに放置された。あれ、生ゴミになるのかな。
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