04



 Sakura addictionを歌いながら万年筆を動かす。


「桜咲く舞い落ちる」


 ノリノリで書類を片付けていると、ノックがあった。歌うのを止めて入れと言えば、草壁が、コピーを頼んでおいた書類を持って立っていた。


「失礼します」

「うん。来たならちょうど良いからお茶淹れて」

「はっ」


 草壁が書類を僕の机の上に置いた後緑茶を入れる。この体になってからクリーム系のお菓子が苦手になって、和菓子が美味しく思えてきた。前も和菓子は嫌いじゃなかったけど『嫌いじゃない』という程度だったのに。

 草壁が茶葉を蒸らす間に机の上を軽く片付ける。終わった書類は右の箱未処理の書類は左の箱と分別しているから、終わったものを右に入れる。


「どうぞ」

「うん」


 差し出された緑茶に口を付け、一緒に机に置かれた舟和の芋ようかんに楊枝を刺す。ついでに言えば前は文明堂のカステラだった。


「あの、委員長」


 食べ終わって一息ついた頃草壁が声をかけてきた。壁際に立って僕の邪魔にならないようしてたのにどうしたんだか。


「何?」

「委員長は――その」


 言葉を濁す草壁になんだかイラっとした。はっきりしなよ。いつもの草壁らしくないし、なによりせっかく僕が話を聞いてやろうと思って促してるのに言わないのがむかつく。相手が草壁じゃなかったらとっくに咬み殺してるよ。


「何」

「委員長は、歌を歌うことがお好きなのですか?」


 何かと思えば歌のことだとは。どこに言いにくい要素があったんだか分らない。


「まあ、好きな部類に入るね。それが?」


 何故か草壁が嬉しそうに相好を崩した。変な草壁だ。


「今度カラオケの機械を入れますね」

「いらないよ」


 なんだか満面の笑顔で気色が悪い草壁を応接室から追い出す。

 草壁も何を考えてるんだか。入れるならjoyが良いけどそういう問題じゃない。


『草壁は××の好きなものが分って嬉しかったんじゃないの?』


 きょうやが珍しくむこうから声をかけてきた。


「まさか。僕は好き嫌いをはっきりしてる」

『そうかな?』

「そうさ」


 ごま摺りに来た奴らが洋菓子を持ってきたらそれを投げつけるし、和菓子だったらトンファーで相手を殴る。ちゃんと区別してるじゃないか。僕は食べたくないものは食べない主義だから。


『××は分りにくいよ』

「そう?」


 自分じゃ分らないね。









 次の日沢田綱吉が母親の手作りだというどら焼きを持ってきたから、頭を撫でて教室に返した。


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