03



 今日は風紀委員の服装チェックの日だから、遅刻したら怒られる! そう思ってたのに、気付けば二度寝して八時四十五分を回ってた。


「何で起こしてくれなかったんだよ母さん!」

「起こしたわよ、ツッ君! ご飯はどうするの?」

「食べてく時間なんてないよー!」


 オレは走って学校に向かう。昨日遅くまでゲームしすぎたかな、と思うけど皆十二時まで起きてるとか聞くし。


「ひぃぃぃぃい! 遅刻ぅぅぅぅぅ!!」


 チャイムが鳴ったのが聞こえて慌てる。オレ走るの苦手なんだよ!

 校門はなぜか閉まってなくて、何でと思う余裕もなく息を切らせて飛び込んだら風紀委員が仁王立ちしていた。


「ゲー! 風紀委員?!」

「遅刻だよ」

「はははははは、はい、すみませんー!!」


 風紀委員の腕章が留められた学ラン姿の――二年生か三年生かだろう人にオレは土下座して謝る。

 どこかで見た人だと思ったら、入学式で挨拶した人だ。たしか風紀委員長のひば――ひば? 何とかさん。


「土下座されても不愉快なんだけど。で、今度から遅刻しない約束はできるの、できないの?」


 土下座はやめろと言われたから顔をあげたら、不機嫌そうな委員長の顔が見えた。


「あ、うー」


 約束しても守れる気がしなくて目をそらせば、何時に起きているのか聞かれた。


「は、八時半……?」


 一応目覚ましは八時半にセットしてる。走れば五分くらいで学校に着くし。


「本当に?」

「それからまた二度寝しちゃって……」


 委員長は呆れたと言わんばかりに半眼になった。


「君、これから七時半に起きろ」

「そ、そんな!」


 そんな早起きなんて無理だ!


「文句は聞かないよ、これは命令だから。どうせ夜更かししてなかなか寝ないから睡眠時間が足りてないとかが原因でしょ。中学生になったら何でもして良いとか勘違いしてるんだったら、今すぐその考えを改めるべきだね。自分の好き勝手して許されるのは高校を卒業してから、自分で何でも責任が取れるようになってから主張するものだよ」


 夜更かしして、と言われて項垂れた。その通りだから。もうオレは小学生じゃないんだから何をしたって良いと思ってた。でも、違うんだ――


「もしこれ以降君が三回遅刻したら、僕のトンファーの的になってもらうから」

「ひっ!」

「分かったね」

「はいいいい!」


 さあ行け、と委員長に顎で示され、オレは走って教室に向かった。


「お、おはようございまーす……」

「遅いぞ沢田! 遅刻だ!」


 後ろの扉を開けて入れば、担任が怒鳴った。


「あ、あの――オレ、風紀委員に」


 そういうと担任が一気に顔色を悪くして早く言え、とまた怒鳴った。

 いそいそと席に着き、さっき会った風紀委員長のことを考える。噂に聞くほど暴力的じゃなかったし、オレのことをちゃんと分かりやすい理由を言って怒ってくれた。親父は元々家にい付かなか挙句死んじゃったし、オレは年上の男に怒られたことがほとんどない。それも、言い訳も聞かずに怒鳴り散らすんじゃなくて冷静にオレの悪いところを改善しようとしてくれるのが分かった。三回目の罰ってのはきっと、オレが遅刻しないように目標を立ててくれたんだろーな。

 あんなに怖がって悪かったかも。名前忘れちゃったけど、今度お礼しに行こう。


3/5
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