07



 もう目をえぐった後の死体らしい。眼窩はベコリと落ちくぼみ、生前の造作を留めていない。だが――この年齢で、この髪の色……もしやクラピカだろうか? 女の子に見えるけどクラピカ女顔だったし、ちょっと性別を失礼させてもらおう。


「――ない」

「なにしてんだ……」


 どうせ子供、恥ずかしがることでもないから股に手を置いて確かめた。すとんと落ちる股間に勘違いだと分る。女の子だった。


「子供の顔は性別が分りにくい。どっちなのかと思って」


 あきれ顔のノブナガにそう説明すれば、ノブナガはお前も十分子供だろがとため息と共に零す。私は縮んではいるが元々高校生、ケツの青い餓鬼に興味はない。


「さあ、やれ」


 黙って私とノブナガの漫才を見ていたクロロがナイフを差し出して来た。さっきのベンズナイフとは違う、ごく一般的なサバイバルナイフだ。受け取り手首に刃を当てるが、そこで気が付いた。どこに血をかければ良いんだろうか。ここは常識的に口に流し込むべきなのか、それとも損傷が激しい眼孔に注ぐべきなのか。――とりあえず両方にかければ良いか。

 刃を引き血が吹き出た。痛いけれど、血が青いとなんだかリアルさに欠けて現実味がしない。しゃがんで子供の目と口に血を垂らしているうちに出血が止まった。クロロが腕を組んで子供を見下ろす。私は子供の横でどうなるのか見続ける。――秒針の動きがゆっくりになったような、何時間も過ぎたように思われた。


「へぇ……」

「これは凄いな」

「面白いなぁこの能力」

「念――ではない、のよね?」

「ほお」

「おもしれーなぁ」


 順にマチ、クロロ、シャルナーク、パクノダ、ノブナガ、ウボォーだ。フェイタンとフランクリンはただ黙って見ている。

 肉がむき出しだった瞼が再生され、青いというよりは白い肌に血色が戻っていく。だんだんと膨らんでいく瞼の下ではきっと眼球が成長しているんだろう。ゆっくりと上下し始めた胸部に呼吸を確認し、一度終わったはずの生命活動が再び始まったということが証明された。


「念能力ではない、それは確かだ。つまりこれはこの子供の持つ特殊能力――盗むことは不可能か」


 クロロが私を見ながら言った。念なら盗むつもりだったんだろうが、私自身理解しきれていない能力をどう説明しろというのか。


「名前をなんという」

「由麻」

「ユマ?」

「うん」


 この日私は幻影旅団の所有物になり、ノブナガの養い子になった。


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