06



 結果を言えば、私はノブナガに引き取られると決まった。同じ日本人、いや、この世界ではジャポン人であるからだろう、ノブナガの私を見る目は他のメンバーのそれよりも幾分か柔らかい。一番硬いのはフェイタンだ……同情するでもなく嫌悪するでもなく、ただそこに存在する物質を見る目だ。――苦手な目だ。無視されるよりも辛いこと、それは人間と思ってもらえないことだから。


「ところで、テーブルが成長しているようだが」


 私を迎えに来たというよりは全員が私のいる部屋に来たから、私の血を吸って成長した若木を見たクロロが面白そうに訊いてきた。


「うん。成長させるつもりはなかったんだけど」


 この世界に来て変わったのは「血」だ。治癒能力が上がったのもあるかもしれないが、血に再生能力が付いたようだ。呼吸をしているとはいえ死んだ木から芽が伸びることなどあるはずがない――この血が命を吹き込んだのか、蘇らせたのか。どちらかだろう。


「あ? お前やっぱり念能力者だったのか?」

「ううん、念の概念は知っているけど修行したことはない。ノブナガ、私はここに連れて来られた時膝をすりむいただろう? 今私の膝には傷はない……血に治癒能力があるのかもしれないと思って血を流してみたら、テーブルに落ちた血だまりから芽が伸びた。どうやら血に再生能力か何かがあったらしい」


 テーブルの上に置きっぱなしにしていたナイフを取り上げ言えば、クロロがそんなところにあったのかと何やら呟いていた。


「これがどうかしたの」

「それはオレのベンズナイフだ。どこに置いたか忘れていたが、この部屋にあったのか」


 ベンズナイフ――殺傷能力を高めることのみを追求し作られたナイフ。


「私、これで自分の手を刺したんだけど」

「たしかホエールキラーとか言われる毒を塗っていたはずだが」

「……ホエールキラー」


 直訳、鯨殺し。私は果物ナイフ、否、ベンズナイフを見下ろした。どうやらこの体は毒にも耐性があるらしい。それとも血が浄化してしまったのか。


「クク……面白いな、お前」

「私も自分が自分で分らない。この血ならば死者蘇生だろうと出来そうな気がする」


 とんだ特殊能力だが、もしこのまま幻影旅団と行動を共にするというなら必要に違いない。ウボォーは死ぬ。死体さえ残れば、私が蘇生できる。


「なら、試してみるか。ちょうど死体なら大量にあるからな」


 ナイフを見つめていた私の手を取り、クロロは歩き出した。急な展開にノブナガを振り返れば、ノブナガは少し目を見開いた後苦笑しつつ肩を竦め頷いた。

 そして私は、クルタ族の死体と対面するのだ。


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