08



 あの『ザンザス切れかけ事件』がツナのおっさんの乱入で未遂に終わった後、オレは家に帰してもらえずにホテルに連れ帰られた。一人一部屋与えられたロイヤルスイートの調度品はゴシック調で、荒削りの木みてーな風合いをしててちょっと重い。どうせ家に帰れねぇなら電話でもするかと室内の電話に向かおうとしたオレをスペルビは部屋に無理やり連れ込んだ。電話してーのに……。

 スペルビがオレの腹に腕を回して放そうとしない。よっぽどオレと敵対すんのが嫌なんだな……。でも仕方なくね? オレ元々向こう側で参加するつもりだったし。オレがヴァリアーの雲って時点で色々とおかしいんだよなー、原作じゃモスカだったし、中にじーさん入ってるはずだし? じゃあじーさんどこ行ったんだ?

 考えるだけ無駄だからオレを連れ込んだくせにさっきから何も言わねぇスペルビを弄ることにした。スペルビって反応良いんだよな。


「スーペールービー?」

「……なんだぁ」

「敵対してるわけじゃねーだろ、オレたち。ただいつもの試合より景品の価値が重いってだけだって、な?」

「うお゛ぉい!? 何考えてやがる、ボンゴレリングはそんな軽いもんじゃねぇんだぞぉ!!」


 耳のすぐそばで怒鳴られるから鼓膜が破れそうで痛ぇんだけど。もっとオレの身になって考えてくれねーかなー……スペルビがオレの鼓膜の心配――想像できねぇな。そんなのオレの知ってるスペルビじゃねーし。


「ったく。あんなぁ、良く聞けよ?」


 スペルビに背中を押しつけながら言う。


「オレが勝ってもスペルビが勝っても、雨のリングはオレんだから」

「あ゛あ!?」

「オレに勝ったら、嵌めてくれよな――左手の薬指」


 左手をスペルビの目の前でヒラヒラと振ったら、スペルビは顔を真っ赤にしてどもった。なんつーか、スペルビって初心だよな? 初恋がオレとか言うし、恋多きイタリア人とは思えねぇんだけど。両親は実はドイツ人とかじゃね?


「で、オレが勝ったら」

「ローンディネが勝ったら……?」


 スペルビの息を飲む音が聞こえる。オレはニンマリと笑んだ。スペルビからは見えてないだろうけど雰囲気で分ったらしいスペルビの体がちょっと震えた。


「親父へ挨拶に来るの、ナシ」

「うお゛お゛おい!? それは、つまり――」

「ダーリンハニー解消、みてーな?」


 同性婚出来るところに籍を移して、信頼できる仲間だけ呼んで式あげて――と夢想に心躍らせてたスペルビにはワリーけど、オレ自分より弱い奴に攻められたくねーし?


「絶対勝つからなローンディネェ……覚悟してろぉ」

「んー、お手柔らかに」


 負けるつもりはねーけど、スペルビのミイラ男化はどうにかしてーんだよな。スペルビの匂いがふっと香ったことに思わず頬が緩む。













 ――もしオレが勝っちまったら、スペルビが勝つまで何度も試合するに決まってんだろ?


8/10
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