05



 伊達の旦那から、わざわざ黒脛巾を使って文が届いた。宛先は俺って――旦那じゃないの?


「アハ、もしかして恋文ー? 俺様ってばモテモテで困っちゃうな」


 何が目的なのか分らないけど、黒脛巾を前にしてるからそんな戯言を言いながら折りたたまれた紙をカサリと開いた。内容は短い――俺そっくりの男が、今奥州にいる。それだけ。……これだけ?!


「わざわざ黒脛巾使ってまで知らせることなの?! そっくりさんなんて世間様探せば二人はいるって聞いたことあるんだけど」

「俺がその男を確認し、政宗様に報告した。その男はお前に怖いくらいそっくりだぞ猿飛」


 黒脛巾が眉間にしわを寄せながら言った。そんなにそっくりだっていうなら見てみたい気もするけど、俺の仕事場って旦那の近くだし。そんな野次馬に奥州に行くのもなー。――一日くらいなら才蔵に押し付け……じゃないや、任せて行ってみるのも良いかもね。伊達の城下町のおまんじゅうが絶品だとか聞くし、お土産に買って帰れば旦那も文句言わないでしょ。


「んじゃあちょっと見に行ってみますか。伊達の旦那にはアリガトって伝えといてくれる?」

「お前からしたら敵将かもしらんが、俺にとっては敬うべき主だ。さまを付けろさまを」

「じゃあ伊達の旦那さまに伝言お願いね」


 うえっ、旦那さまって言うの気色悪い。どうやら黒脛巾もそう思ったみたいで同じように顔をしかめてる。


「来た時には挨拶しに来い」

「へーい」


 面倒だけどした方が角が立たないんだから仕方ない。俺様は旦那をまんじゅうで釣って伊達行きの許可をもらった。









 今、黒脛巾の誘導で『俺のそっくりさん』の見える場所にやってきた。どうやら俺が行く予定だった甘味屋よしのにいるんだとか。楽しみー。――と、そう思ってた俺は、『そっくり』の度合いを測り間違えてた。向こうさんは黒髪みたいだけどさ、あれって俺そのままじゃん。ちょっと向こうさんのが眉尻が上がってて切れ長の目だけどほとんど一緒。


「美味しいねーこのおまんじゅう。ねーねーゆりさん、この餡子って秘伝の製法とかあるの?」

「やーね××さん、それは門外不出です」

「だって美味しいんだもん、教えてよ」


 黒脛巾が言った。


「お前そっくりだな」

「俺様あんなに軟派じゃないよ?!」


 その後も観察してたけど、どう見てもただの軟派な旅人にしか見えなかった。餡子の製法が気になると言う××に店の女はなら婿に来いと誘い、××は本気で迷っている様子だった。そんなに美味しいの、そのおまんじゅう。――旦那が味を占めてここまで俺様が通うことになったりしたら悲惨なんだけど。


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