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 五日で終わる予定だった手習いは三日で終わった。父上厳しい、オレ涙目だよ怖いよ父上。あれから数カ月が過ぎ、今では週一で一宗殿があれこれといった本を持ってきてくれる。だから本にはこと欠かずに済んでるけど……やっぱり読書だけで暇をつぶそうって言うのが間違いだった。一宗殿の持ってこられる分というのもあるし、一度の借りられるのは四冊か五冊。まあ家――っていうか城――にも書庫があるんだけど本読むばかりじゃ飽きるから今のところそんなに活用されてない。


「はぁ……」


 とりあえず走っとけトレーニングはすぐ飽きた。小さいうちから鍛え過ぎたら背が伸びないって聞いた覚えがあるから滅多な修行も出来ない。同世代の子供がいたらチャンバラごっことかするんだけどと思ったら、遊び相手として付けられた同世代の子がチャンバラごっこを出来る精神年齢じゃなかった。もうオレどうすれば良いの……。


「BASARAなんらよなー」


 最近になって気付いたことがある。父上の顔――あれはBASARAの毛利元就の顔そのまんまだ。ちょっと若いみたいだからゲーム前なんだろうとは思うんだけど、何年前なのか詳しいことは分らない。それにゲームの中でオレの存在なんてなかったし。つき従う兵士を駒と呼び簡単に切り捨てる非情の将――が、オレの父上。父上のことだ、オレもきっと切り捨てられる駒でしかないんだろうと思うと陰鬱な気持ちになって来る。

 切り捨てられないためには、この戦国を生き延びるためには何が必要か。それを考えると、オレが婆娑羅者であったら生存率が上がると気付いた。その代わり前線に出る確率もあがるけど一般兵を前にすると婆娑羅者はほぼチートだ、武将に囲まれでもしなけりゃ生き残るのは容易い――と思いたい。でもこれ、オレが婆娑羅者だったらって前提の話であって、オレが実際婆娑羅者かどうかは分らないんだよね。

 死にたくない。唯の駒として切り捨てられたくない。せめて戦国乱世から逃れられないなら力が欲しい。オレはため息を吐く。欲したとして、与えられるわけではない。ならオレがどうするか。それが問題だ。

 風に乗って、オレの座る縁側に楓の紅葉した葉が滑り降りた。あんまり綺麗に赤く染まってるから、しおりにでもしようかと拾い上げる。そして、思い出したのは某国の国旗。


「――そうだ」


 戦いたくなければ圧倒的な戦力を保持すれば良い。兵を多く持ちたければ国力を上げれば良い。国力を上げたければ特産品を作れば、良い。今は何時代だ、戦国時代だ。ならこれは必ず役に立つ――だってオレは現代の知識を持ってるんだから。


「先ずはコレからかな」


 手の中の楓を握りしめた。


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